【ネオヴィンテージ】クォーツショックから復活した時代の機械式時計の魅力とは?
出演:松浦×三好×芦野
ヴィンテージのなかでは“最近”として位置づけられている1980年〜2000年。その年代に生産された時計を「ネオヴィンテージ」と呼ぶ流れができつつある。
1969年にクォーツショックが起こった時計業界。その後、技術や資本などさまざまなものが整えられ、機械式時計が復活するのが1980年代後半だ。不遇な時代を経て輝きを取り戻した「ネオヴィンテージ」の魅力を、厳選したモデルとともに解説。また「ネオヴィンテージ」を語るに外せないETA社のムーブメントについても触れていく。
バランスの取れた時計。ロレックス サンダーバード
スタッフの三好さんがセレクトしたネオヴィンテージは、ロレックス『サンダーバード 1996年製 Re.16264 ブルーダイヤル』。

「今はもうサンダーバードは作られていないじゃないですか。1990年代の時計なのに、もう作られていない時計は少ないと思うんです。私的には特別な時計です」(三好さん)
「ターノグラフという時計に変わったからね」(松浦さん)
「サンダーバードは1970年代以前と以降では見た目がガラッと変わっている。そのなかでもネオヴィンテージのサンダーバードの魅力は、キラキラとした新しさもありつつヴィンテージ感も残っています。好きな一本です」(三好さん)
「三好さんらしいです。一筋縄ではいかないようなデザイン。ブルーダイヤルも王道ではないですからね」(芦野さん)
「アバンギャルドだね」(松浦さん)
立体的なベゼルでボリュームがあり、ドレッシーだけれどスポーティさを感じるデザインだ。松浦さん曰く「バランスが取れた時計」がサンダーバードである。
着けやすさも魅力。ロレックス “グリーンサブ”
続いて紹介するネオヴィンテージ時計もロレックスから。『サブマリーナー Ref.16610LV グリーンサブ 2005年製 ギャラ付き』を見ていく。

「これはサブマリーナーの50周年記念に作られたモデル。記念モデルや復刻版などを買えるのはネオヴィンテージだからこその特典という感じがします」(芦野さん)
「正直、発売された当時はそんなに評判は良くなかったんです。ロレックスのコーポレートカラーがグリーンなので、安易にグリーンにしたと冷ややかな目で見られていました」(松浦さん)
「これは現行に比べてラグの幅が抑えられていて着けやすい。そこがネオヴィンテージの良さ。おすすめの一本です」(芦野さん)
50周年記念モデルということもあり、将来性を期待して購入した人たちが多かったようだ。そして、冷ややかな目で見られていた一方、意外にもグリーン好きが多かったようで、後に文字盤もグリーンにした通称“ハルク”と呼ばれるモデルも登場している。
ネオヴィンテージの代表格! IWC ポートフィノ
3本目は、高級感あふれるIWC『ポートフィノ 1991年製 自動巻き ホワイトエナメルダイヤル』をピックアップ。

「以前に女性が『ポートフィノ』を探していらっしゃいました。1990年代らしいエナメル感が清楚で良いですよね」(三好さん)
「ポートフィノに限らず、現行のドレス系の時計は価格が高騰しています。でもネオヴィンテージは古臭さを感じず、かつ綺麗な良い状態のものを買えるのが特徴かなと思います。これはそこまで薄すぎず、ドレスウォッチとビジネスウォッチの間。時計を着けている感覚も味わえる一本です」(芦野さん)
ポートフィノは以前、ファイアーキッズのYouTubeにて『仕事ができそうに見える時計』として紹介した。誠実さを感じるデザインはビジネスパーソンにはぴったりだ。そして松浦さんは「ポートフィノはネオヴィンテージの代表格」と語る。
状態が良く買い求めやすい価格であることは大きな魅力。ドレスウィッチを検討している方は、ネオヴィンテージから探してみるのもよいだろう。
ETA社のムーブメントを搭載。タグ・ホイヤー&オメガのクロノグラフ
前述のとおり、1969年にクォーツショックがあり、機械式メーカーは生き残りをかけて右往左往したのちに1980年代後半から復活を果たす。そこでキーワードに挙がるのがETA社のムーブメントだ。

ETA社のムーブメントは汎用性があり性能が良い反面、独自性に欠けることから、過去には軽く扱われていた時代があったという。しかし、広く使われていることは優秀である証拠といえる。
このETA社のムーブメントを搭載しているのが、タグ・ホイヤー『1980年代製 200mダイバーズ 自動巻きクロノグラフ 純正ブレス付き』や、オメガ『スピードマスター ブルーダイヤル トリプルカレンダークロノグラフ 1998年製 自動巻き』だ。

「タグ・ホイヤーやオメガ、IWCにも入っているし、いろんなメーカーで使われていて、時代を代表するムーブメント。Cal.7750はまさにクロノグラフの代表。今はETAが入っていると安心感がある。マニュファクチュールで独自のムーブメントだと、修理はそのメーカーにしか依頼できなくなってしまう。ETAが入っているといろんなところで修理してもらえるので、維持費も安くなります」(松浦さん)
「職人側からしてもETAのムーブメントはすごいなと感じる?」(芦野さん)
「そうだね。『ETAなら大丈夫!』という感覚はあると思う」(松浦さん)
「今となってはETAが入っていると『メンテナンス性に優れていますね』と、プラスの要素としてご案内しているので、歴史を考えると面白いですね」(三好さん)
「当時を知っている身としては、物事の見方によって評価が変わっていくのは面白いなと思います」(松浦さん)
タグ・ホイヤーは当時F1のスポンサーを務めていた。特に人気のあったドライバー、アイルトン・セナが愛用していたことからも、今でもF1人気の高いヨーロッパを中心に人気のあるメーカーだ。
ネオヴィンテージは、クォーツショックから復活し、古き良き時代から継承される技術と、現代的な価値観が融合した時期に生まれた時計だ。時計を選ぶ際、こうした歴史的な背景・年代で絞って探してみるのも面白いのではないだろうか。
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