REAL VALUE認定者・野添氏にヴィンテージ腕時計を贈呈。選ばれたのは1973年製『キングセイコー』
時計マニアが集まるFIRE KIDSのスタッフが、ヴィンテージ時計の魅力を伝えるYouTubeコーナー。毎回異なるテーマで、厳選されたモデルをご紹介する。
FIRE KIDSでは、REAL VALUE認定者に副賞としてヴィンテージ腕時計を贈呈している。今回選ばれたのは、1973年製『キングセイコー 56KS クロノメーター』。受け取ったのは、ウィッグ事業を展開する野添誉司さん。授与の場では、腕時計とファッション、そして身だしなみの力について語られた。
キングセイコー『56KS』が持つ実用性と品格
「本日はREAL VALUE認定者の野添さんに、ヴィンテージ腕時計を贈呈させていただきます」そう切り出した遠藤が手渡したのは、『キングセイコー クロノメーター ハイビート 自動巻き 1973年製 Ref.5626-7041 56KS』。通称『56KS』と呼ばれるモデルだ。

国内でもクロノメーター検定が可能になったことで、正式に「CHRONOMETER」表記を与えられたセイコーの代表機種。ハイビート仕様の5626Bムーブメントを搭載し、デイデイト機能も備えた万能型だ。実用性に優れつつも、セイコースタイルを体現した端正なデザインは、今もなお多くの愛好家を惹きつける。
「そんなに詳しくはないんですけど、『最近復刻した』みたいなことをネットで見たことはあります」(野添さん)
「そうなんです。グランドセイコーがブランド化され、今いろんなモデルが復刻されていて、その中の一つにキングセイコーもあります。大谷翔平選手が着けている腕時計でもありますね」(FIRE KIDS・遠藤)
贈呈されたキングセイコーは革ベルト仕様であり、野添氏は革ベルトの時計は初めてだという。
「カッコいい! 冠婚葬祭の時に着けられる時計を探していたんですけど、まさにピッタリですね」(野添さん)
遠藤も「商談や会議の場、フォーマルなシーンでも使える一本です」と応じる。キングセイコーが持つ上品さは、場を選ばず着用できる汎用性を持っている。

腕時計もウィッグも「身だしなみ」を整える力
野添氏の事業は、従来の高級品であった男性用ウィッグを、月額7,800円からのサブスクリプションサービスとして展開し、価格帯で最安値に挑戦するというもの。薄毛を隠すのではなく、むしろ「変身を楽しむメリット」へと逆転させるというユニークな発想がREAL VALUEでは評価された。このウィッグ事業の根幹にある「身だしなみ」や「印象」の重要性は、腕時計の話と通じるものがあった。
野添さんは、これまで美容師として働いてきた背景から「右手に腕時計を着けるスタイル」を貫いているという。ヘアスプレーなどで左手の腕時計が汚れてしまうため、右手に馴染んでしまったと話す。腕時計の位置にこだわりを持つのもまた、一つの身だしなみの形だ。
「腕時計を『着けられているのか』『着けているのか』で違うと思っているので、ウィッグなしの状態で、こういうカッコいい時計とかをすると、腕時計に負けてしまう」(野添さん)
つまり、どんなに高価な腕時計であっても、身だしなみが整っていなければ、腕時計の持つ風格に持ち主が負けてしまうというのだ。腕時計もウィッグも、その人の印象や発言の説得力を高めるための「身だしなみ」という点で共通している。野添氏は、服装やTPOに合わせて髪型(ウィッグ)を使い分けるという。
「僕は腕時計を服装や季節・気候によって変えたりするんですけど、それに近いですよね」(FIRE KIDS・遠藤)
野添さんは実際にウィッグを外して、その変化を目の前で見せてくれた。スタッフ全員が驚くほど自然な仕上がりに、「腕時計と同じで、少しの違いで人の印象は大きく変わる」と語る姿が印象的だった。
ダサいを覆す日本の技術力。セイコーの歴史と精度
野添氏はかつて、日本の時計ブランド、セイコーに対して少しマイナスなイメージを抱いていたと明かす。
「大谷翔平モデルでイメージは変わってきたと思いますが、やはりちょっとダサいというか少しおじさんくさいだったり、そういうイメージが昔はあったんですよね。今は若い人も着けられているんですか?」(野添さん)
「多いですね。この頃のヴィンテージのセイコーってすごくストーリーがあって、戦後に復興した証としてグランドセイコーは起ち上げられているんですよ。実用品の腕時計にファッション的要素を取り入れて発表されたのがキングセイコーで、1970年代のことですね」(FIRE KIDS・遠藤)
特にこの1970年代は、セイコー自身がクォーツ時計を発明し、機械式時計の危機「クォーツショック」を引き起こした時代と重なる。
「機械式時計が減る時期なんです。減る時期にも関わらずセイコーはリリースし続けて、その技術の証明としてセイコーは作り続けている」(FIRE KIDS・遠藤)
そして、50年以上前の機械式時計が持つ精度は、現代人の想像を超える。
「我々のヴィンテージ腕時計で言うと、1日のうちに±1分以内にズレが収まっていれば精度が良い方です。だいたい測定機で見ると15秒〜20秒には収まりますね。それが70年前や50年前の腕時計でそのズレなので」(FIRE KIDS・遠藤)

「そう考えるとめちゃくちゃすごいですね。歴史を知るととても面白いです」(野添さん)
「技術の集約というか、本日贈呈したキングセイコーも日差15秒くらいで、十分精度は出ています」(FIRE KIDS・遠藤)
今回、REAL VALUE認定者としてキングセイコーを手にした野添さんのエピソードからは、「髪型や腕時計といった細部は、自分を表現する一部である」というメッセージが伝わってきた。ヴィンテージ腕時計の世界は奥深く、一本の選択が人生のシーンに彩りを添える。あなたも自分にふさわしい一本を探してみてはいかがだろうか。
キングセイコーQ&A
Q. キングセイコーとは?――誕生の背景、グランドセイコーとの違い、代表的ムーブメントを初心者向けに知りたい
A. キングセイコー(King Seiko/KS)は、1960年代にセイコーが高精度機械式で世界水準へ挑む中で生まれた上級ラインです。主に第二精工舎(亀戸工場)が手がけ、スイスに学んだ厳格な精度追求と、面の切り替えがシャープな“セイコーの意匠哲学”を強く打ち出したのが持ち味。兄弟関係にあるグランドセイコー(GS)が「最高規格」「フラッグシップ」を担ったのに対し、キングセイコーは実用と意匠のバランスを前面に出し、日常で使える高精度を目指して登場しました。
Q. ヴィンテージのキングセイコー、どう選べばいい?――“本物らしさ”の見分け方と購入前チェックポイント
A. まず外装のラインが立っているかを確認しましょう。キングセイコーの魅力はケースの稜線(エッジ)と面構成にあります。過度な研磨で角が丸い個体は、デザインの要が損なわれがちです。 針とインデックスの関係(長さ・夜光の有無・色味の整合)や、風防・リューズの仕様が年代と合っているかもポイント。裏蓋の型番・ケース番号の刻印、メダリオン(世代により有無あり)の状態も価値に影響します。
Q. 日常使いして大丈夫?――精度の目安、メンテナンス間隔、水回りや磁気に対する注意点
A. 適切に整備されたキングセイコーなら、日差±10〜30秒程度を実用範囲の目安として使えます(個体差・整備状態で上下します)。オーバーホールは3〜4年を目安に、油脂劣化やパッキン硬化が進む前の予防整備がおすすめ。 水回りは基本“非防水”と考えるのが安全です。
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