ヴィンテージ時計店へ行くことを勧める理由

2023.07.20
Written by 赤井幸平

文=赤井幸平

お店で見ることの重要性

 近年、中古時計業界には多くの新しい店が誕生している。さらにインターネット上にはそれ以上に沢山の店が誕生しており、多くの商品が簡単に見られるようになった。

 なかなか店舗に行けない、という人にとってより買いやすい環境になったのは間違いないが、可能な限り実際にお店に行くことをお勧めしたい。より気持ち良く納得して買うために、また失敗を避けるための来店のススメを、3つのメリットとともに簡単に実体験とともに紹介していきたい。

 直接お店に行くことの3つのメリットは次の3つになる。

①自分の目で直に見ること

②着用感

③売り手と直接話すこと

 まず①の自分の目で直に見ることだが、メーカーの宣材写真はもちろん、並行店での商品写真なども撮り方や加工の仕方によって全く異なる色味や質感になるからだ。特にニュアンスカラーの文字盤や、経年により変色し複雑な色味を持つ場合は、実際に見てみると異なる印象を受けるだろう。

 例えば傷一つとっても、目立たないとネット上に表記されていた傷が、小さくても目につく場合が十分にあり得る。逆に傷が多くても、実際に見て納得ができれば満足できることもあるからだ。

 実体験でいうと現在私が愛用しているロレックス『サブマリーナー』は当初は気になるな、と言うレベルで、また予算を超えていたこともあり悩んでいたが、夜光の焼け感と全体的な雰囲気に一目で引き込まれてしまい購入に至った。

 また仕入れでの話になるが、やはり写真や記載では目立たなかった、もしくは目立たないと記載があるが、実際は想定よりも大きかったということは日常茶飯事なのである。

着用することは大切だ

 ②の着用感も視覚的な部分と同様に重要である。ネガティブに言われるのは想像していたより重かった、大き過ぎた、接地面に違和感がある(極端な場合痛い、など)ということ。デザインもはまり、色味も間違いない、とんでもなく好きな時計を見つけたが、重く、大きく、腕周りに合わないため長時間の着用では痛みも感じる、というケースは良くあることだ。

 着用感はしばらくつけてから感じる場合もあり、逆に馴染む場合もあるので、短時間の試着で全てわかるわけではないが、大きなヒントにはなり得るだろう。

 実体験で言うと欲しい時計が着用感でダメだったと言うことは少ないのだが、少し大きいかな?と思っていた時計が試着してみたら意外と良かったというのはあった。失敗談はお客様の話になってしまうが、ラバーだからと試着そこそこに購入をしたら、思いの外合わず、痛みを感じるので手放してしまったという話もあった。

店員との会話を大切に

  ③売り手と話すことも重要。売り手を知ることで、無用な失敗を避けることができるからだ。

 わかりやすい例で言うと、美品、目立つ傷がない、と記載があるものを購入したら、私的には目立つ傷だったと言うようなケース。この場合は、店舗に行っての購入ならば、自分の目で見て判断できるので、まず間違わないだろう。

 最近、ある店で時計の状態について話をすることで、仕入れの経緯(コレクターのワンオーナー品であるというようなこと)まで知ることができた。それによって、その店員さんの誠実さや、商品の信頼度が伝わり安心して購入した、ということもあった。

 お店に行くことで写真だけだはわかりづらい部分、あるいは見ているだけでは知り得ない情報も、聞くことができるかもしれない、というメリットがある。

 私自身どこへでも行く、というわけではないので、遠方の店については行くことを諦める場合も多いが、時計は安くはない買い物だし、もしかしたら10年を超える付き合いになる可能性もあるものだ。もし欲しい時計を見つけたならば、ぜひ、そのお店を訪れることをオススメする。

writer

赤井幸平

91年福井県出身。大学卒業後某中古時計店にてバイヤー兼販売員として7年ほど勤務。この度は、時計好きつながりでファイアーキッズにコラムを書くことになった。好きな時計は90年代ロレックス全般 、オーデマピゲ『ロイヤルオーク』、IWC『ポルトギーゼ』

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