価格以上の味わいがあるゴールドウォッチ4選
文=戸叶庸之
高級時計においてゴールドウォッチは非常にクラシックな存在であり、ヴィンテージの世界ではドレスウォッチを中心に魅力的なモデルが数多く見つかる。連載第3回は価格以上の味わいが感じられるゴールドウォッチ4本を紹介する。
1.ロレックス『デイデイト』 Ref.1803/8(1971年年製)
ロレックスのオイスターパーペチュアルコレクションの最高峰に位置するプレステージモデルにあたる1956年に発表された「デイデイト」は、日付表示に加えて12時位置に弧状の小窓にフルスペルの曜日を表示した世界初のカレンダー付きの腕時計として知られている。
プロトタイプなどの例外を除くと貴金属のみで展開されており、このモデルのために開発されたプレジデントブレスレットは、時計愛好家や富裕層の間でれっきとしたステータスシンボルになっている。
数年前から時計業界ではゴールドウォッチやジュエリーモデルの再評価の機運が高まっており、ロレックスでは「デイデイト」の人気が上昇。ヴィンテージに関しては、人気が高いオニキスダイヤルのRef.18238のなどが著しく価格が高騰中している。
ここで紹介するRef.1803/8は、極太の針やインデックスであることを理由に、“ファットボーイ”や“ワイドボーイ”の呼称で親しまれているモデルだ。プレジデントブレスレットが欠損している分だけ価格が抑えらている。アーキュエイトフォルムのレザーストラップと合わせることでカジュアル感を演出している。
2.カルティエ『タンク ルイ カルティエ SM』 (1970年製)
カルティエのヴィンテージウォッチで最人気を誇る「タンク」。レクタンギュラーケースの「タンク ルイ カルティエ」をはじめに多くのバリエーションがあるが、とりわけ「PARIS」の表記が入るダイヤルは非常に高い評価を得ており、価格は上昇傾向にある。
こちらの1970年代の個体は、文字盤の6時位置とケースバックのそれぞれに「PARIS」の表記が入る希少モデル。貴重なギャランティーが付属されていることも嬉しい。ちなみにSMサイズはレディスに該当する。
その人気に比例して、近年は入手が難しくなっている「PARIS」ダイヤル。気になる方は早めの来店をお勧めしたい。
3.オメガ『コンステレーション』 Ref.168.029(1969年)
ヴィンテージウォッチでのゴールドウォッチの選択肢としてヴェルメイユ(金張り)のケースがあり、金無垢とも異なる独特の雰囲気が楽しめる。
オメガ コンステレーションの“Cラインケース”は、「時計界のピカソ」と呼び声高いジェラルド・ジェンタが1960年代にデザインを手掛けている。ゴールドを始めにいくつかのケース素材があるなかで異彩を放つのが、ヴェルメイユケースだろう。さらに、ヴェルメイユ製のブレスレットが備わるとより個性的な雰囲気が強まる。
価格については金無垢の時計よりもだいぶリーズナブルになる。ゴールドウォッチの入門としても一押ししたい1本である。
4.オーデマ ピゲ ドレスウォッチ(1980年代)
一般的にドレスウォッチとは、貴金属のラウンド型ケースの2針ないしは3針であることにに加え、ケースの厚みはジャケットの袖口に干渉しないボリュームが好ましいとされている。
ヴィンテージウォッチに明るい方ならご存知だと思うが、ここでの価格とは時計のクオリティ云々の話ではなく、あくまで需要と供給のバランスによって成り立つ。それゆえ、思わぬ価格で上質なドレスウォッチと出合える場合が多い。
ここで紹介するオーデマ ピゲの2針の腕時計は、上記の条件に当てはまるドレスウォッチだ。極薄のケースデザインは、オーデマ ピゲの卓越したウォッチメイキングの実力を物語る。残念ながらローマンインデックスの文字盤にヒビが見られるものの、ケースコンディションは上々。ケース素材と同じ18Kイエローゴールドの尾錠が付属する。
writer
戸叶庸之
神奈川県出身。大学在学中に出版社でのアルバイトからマスコミ関係の仕事に携
わる。その後、カルチャー誌、ファッション誌で編集・ライターとして活動をスタート。Web媒体は黎明期から携わり、藤原ヒロシ氏が発起人のWebマガジン「ハニカム」、講談社「フォルツァスタイル」などの立ち上げに参加。現在は、各種メディアで執筆、編集、ディレクションのほか、Webマーケティングや広告案件に従事。時計については、趣味でヴィンテージロレックスを収集しつつ、年代やジャンルを問わず、様々な角度から高級時計のトレンドを常に追いかけている。