オーデマ ピゲの老舗ブランド特有の洗練された美観は大きなポイント~古着YouTuberゆーみん&きうてぃ、ゆーみん編

2023.08.27
Written by 長谷川剛

文=長谷川剛

時計好きに「あなたの時計、見せてください」と依頼するこの企画。今回はビンテージウエアのオンラインショップを手掛けつつ、学生時代からの親友と古着YouTubeを配信しているゆーみんさんにインタビュー。ビンテージ服が人生の一大事にシフトしていく経緯と愛用時計についてうかがった。

大学時代に出会ったある一着

現在29歳のゆーみんさん。自身の古着オンラインショップ「from_antique」を運営しながら、学生時代からの友人、きうてぃさんとタッグを組んで、これまた古着系となる人気YouTubeコンテンツを配信する人物だ。そんなゆーみんさんがこの道に入った切っ掛けのなかでも、特に象徴的であるのが大学時代に出会ったある一着とのこと。

「それまで実用的な衣服に囲まれ暮らしてきた自分にとって、コム デ ギャルソン トリコのあの一着はとても衝撃的でした。種類的にはコートとなる一着ですが、微妙にバルーンシルエットというか、絶妙な曲線を備えており、袖を通すと見たことのない洒落たルックスになるデザインでした。その出会いを経て、強く服というアイテム、装うことの可能性に興味を抱くようになったのです」

ファッションとしての服を楽しむなかで、古着にも出会うこととなるゆーみんさん。そして、あるとき着るだけでなく商品として扱うようにもなる大きな契機が訪れたと語る。

「自分の祖父からちょっとした援助があったんです。理由を聞くと『自分らしく何か大きなことにトライしてほしい』というコトで、じゃあパリに行ってみようと計画を立てました。大学時代にギャルソンに出会って服に興味を持つようになり、いつかはパリコレを覗いてみたいと漠然と思っていたのです。だから海外に出るなら、まずはパリだろうと。そして渡仏し二週間ほど滞在するなかで、僕はあちこちで古着を買い込みました。帰国後それをオークションでさばいてみようと考えたのです。結果として爆発的に売り上げることはありませんでしたが、ひとつの良い経験となったのは間違いありません」

次なるステップが古着活動

そして大学卒業後に某有名百貨店に就職するも、一年で離脱を決意するゆーみんさん。次なるステップとして社会人時代にも継続させていた古着活動がいよいよ本格化し、当時高円寺の古着ショップに勤務していたきうてぃさんと合流。自分たちの興味の中心である古着情報のYouTubeを配信することとなったのである。

YouTubeのパートナー、きうてぃさん(右)と

「僕が務めた百貨店はちょっと窮屈な部分がありました。今から思えば気質的に合わなかったのだと思います。もっと自分らしく有意義に人生をすごしたいと考え、きうてぃと動画配信を始め、個人の事業としてオンラインショップも同時にスタートさせたのです」

そんなゆーみんさんが手掛ける「from_antique」は、どんなテイストの古着を扱うのだろう。

「ヨーロッパのビンテージウエアが中心です。国で言えばフランスがメインとなり、後はイギリスなど。カテゴリーとしてはミリタリーワーク系に加え、1960~80年代のカジュアルウエアがラインナップの中心です。欧州の古着はやっぱりどこか繊細な部分を持つのが特徴。米国系は合理的なファクトリーメイドを大半としますが、欧州はハンドメイド文化が残っており、そこに微妙な違いがあるように感じます。今日、僕が着ているノーカラーのシャツもどこか女性的と言いますか、素材の色も風合いも繊細な味わいがあるんです。装飾はほとんど排しているけど確かな洒落感がある。そんなアイテムをメインにピックアップしています」

そして気になるのがゆーみんさんの時計だ。さり気なく着けてはいるが、高級そうなオーラを強く漂わせている。

「これは去年の夏ごろに買った、1960年代オーデマ ピゲのエクストラフラット。有楽町阪急のVIN-TIMEで偶然見つけたものです。薄型の二針で非常にシンプルですが、やっぱり老舗ブランド特有の洗練された美観は大きなポイント。自分にとって比較的高い買い物ではありましたが、僕はこれを普段使いのものとしています。時計が腕元にあると、やっぱりスタイル全体が締まって見えるもの。今日、自分が着用しているシャツとも共通していますが、シンプルかつドレッシーでありながら、しっかり味わいがある。欧州ならではの伝統や歴史が息づくアイテムに惹かれるのだと思います」

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長谷川剛

長谷川剛

1969年東京都生まれ。エムパイヤスネークビルディングに所属し、『asAyan』の編集に携わる。その後(有)イーターに移籍し『asAyan』『メンズクラブ』などを編集。98年からフリー。『ホットドッグプレス』『ポパイ』等の制作に関わる。2001年トランスワールドジャパンに所属し雑誌『HYBRID』『Warp』の編集に携わる。02年フリーとなり、メンズのファッション記事、カタログ製作を中心とする編集ライターとして活動。04年、エディトリアルチーム「04(zeroyon)」を結成。19年、クリエイターオフィス「テーブルロック」に移籍。アパレル関係に加え時計方面の制作も本格化。

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