幻となりつつあるロンジン手巻きクロノグラフの魅力
文=戸叶庸之
数年前のクロノグラフブームからロンジン製のクロノグラフは市場からめっきり姿を消した。名機Cal.13ZNの話題からその後継機となるCal.30CHの魅力に迫る。
市場から消えつつある、ロンジンの手巻きクロノグラフ
今から数年前、ヴィンテージウォッチの世界では、やたらクロノグラフがよく売れた時期があった。おそらくきっかけは、2017年10月に開催されたフィリップスのロレックスの『コスモグラフ デイトナ』をテーマにしたオークション『ウィニング アイコンズ』の影響だろう。手巻きデイトナが劇的に価格高騰すると、次に『スピード マスター』の2ndモデルあたりが一気に市場から姿を消した。これとほぼ同時期に入手困難になったのが、ロンジンのクロノグラフである。
一部ではパテック フィリップにさえ匹敵するクオリティと持つ言われるロンジンのクロノグラフは、このブームの前から絶大な人気があり、クロノグラフマニアの間で名機中の名機だと誉れ高いCal.13ZNというムーブメントがある。こうした名機のために、いわゆるジャケ買いが出なくムーブメント買いをするツワモノさえいる。
筆者がヴィンテージウォッチを買い始めた頃は、このムーブメントを搭載されたモデルは、当時は100万円ぐらい出せば買うには買えたが、いい状態の個体、優れたデザインになると数百万円、幻級のモデルならすでに1000万円は超えていたかと思う。そして、空前のクロノグラフが始まると、Cal.13ZNは下で1000万円ぐらいまで価格が跳ね上がり、今では見つけること自体が難しくなっている。
Cal.13ZNが高級機専用クロノグラフムーブメントだとするなら、ロンジンにはもうひとつ、Cal.30CHという2レジスターのフライバック式のムーブメントCal.がある。簡単にいうと、Cal.13ZNコストダンを図った後続機であり、ムーブメントとしての格はだいび劣る。仮にそうだとしてもクロノグラフとしての価値がある十分なCal.30CHには人気あり、そのため市場から随分見なくなった。
もちろん、例外はあるが、Cal.30CHは搭載されるロンジンの新しいロゴ(ほとんどがアプライド)で取り付けら得ており、Cal.13ZNの時代のクロノグラフと比べると軽やかなデザインが多い。今回紹介する個体は、1966年製の2-レジスタークロノグラフは、サンバーストの仕上げの文字盤には、外周を赤いプリントのテレメーターと青いプリントのタキメーターが囲みます。ダイヤルは 完璧な状態とはいえないが、ケースは整ったコンディションを保っている。
ロンジンの場合、Cal.13ZNにしても、Cal.30CHにもてもムーブメントの名ばかりが先行しているが、デザインのバリエーションも多く、イメージ通りの個体に辿り着くのは難しいのだが、その分与操舵になかった出合いに期待できる。険しい道のりだが、これもまたヴィンテージウォッチの醍醐味である。
writer
戸叶庸之
神奈川県出身。大学在学中に出版社でのアルバイトからマスコミ関係の仕事に携
わる。その後、カルチャー誌、ファッション誌で編集・ライターとして活動をスタート。Web媒体は黎明期から携わり、藤原ヒロシ氏が発起人のWebマガジン「ハニカム」、講談社「フォルツァスタイル」などの立ち上げに参加。現在は、各種メディアで執筆、編集、ディレクションのほか、Webマーケティングや広告案件に従事。時計については、趣味でヴィンテージロレックスを収集しつつ、年代やジャンルを問わず、様々な角度から高級時計のトレンドを常に追いかけている。