ミルガウス Ref.1019はヴィンテージとしての魅力と実用性を兼ね備えている

2024.02.15
Written by 戸叶庸之

文=戸叶庸之

ロレックス『ミルガウス Ref.1019』(1968年製)Cal.1580 ステンレススチールケース 37mmケース ¥1,980,000

ヴィンテージウォッチの世界を牽引するロレックスから優れた耐磁性能を持つプロフェッショナルウォッチ、『ミルガウス Ref.1019』について解説する。

『ミルガウス』のセカンドモデル Ref.1019について

数あるヴィンテージロレックスの中でもプロフェッショナルモデルのひとつ『ミルガウス』は、特異な存在放つモデルとして長年支持を集めている。

『ミルガウス』は耐磁性能に特化した時計であり、フランス語の1000(ミル)と磁束密度の単位(ガウス)がモデル名の由来。1000ガウスという特別な耐磁性能は、ムーブメントをインナーケースで覆うことで実現に至った。

主なターゲット層は、医者や物理学者や電気技師といった強い磁気にさらされることの多い職業の人々だったが、当時はそれほど需要がなかったため、セールスは苦戦を強いられたことはある程度予想できるだろう。

ファーストモデルのRef.6541は1956年に発表。このモデルはヴィンテージとして絶大な人気があり、世界的なオークションでも高額の落札が続いている。バリエーションが多く、そのすべてを把握することは難しい。コレクションを大別すると、回転ベゼルの仕様とスムースベゼル仕様に分けることができる。ベゼル以外のパーツの特徴として、ブラックのハニカムダイヤルや稲妻の彷彿させる独特の秒針だとが挙がる。製造期間は1956年から1960年初頭と短命に終わる。

こちらで紹介するのは、『ミルガウス』のセカンドモデルにあたるRef.1019。その魅力について解説する。

よりシンプルな顔立ちになった『ミルガウス』のセカンドモデル Ref.1019

製造期間が約4年だったRef.6541に対して、Ref.1019の製造期間は1959~1988年頃までと言われており、約30年間とかなり長かった。この期間で基本的なデザインは一切変わらなかったが、様々なディテールの変遷があった。これが今日ではヴィンテージウォッチとしての価値を産んでいる。

第一に注目すべき点は、ファーストモデルRef.6541からデザインが大幅に変更したことだ。ダイヤルカラーは、ブラックとホワイトの2種類。べセルはスムースベゼルになり、針やインデックスはよりシンプルになった。これによって『ミルガウス』のターゲット層が広がったことはRef.1019の功績なのだと考えれる。ムーブメントは、このモデルのために開発されたCal.1580が搭載されており、この特別感もまた人気の理由なのだ。水分や強い衝撃さえ気をつければ、問題なく普段使いできるのもこのモデルの長所のひとつだ。

特殊な耐磁性能の実現する、自動巻きムーブメントCal.1580、ケースバック、インナーケース一式
『ミルガウス Ref.1019』だけが持つ特別仕様のケースバック

ヴィンテージウォッチとしての価値について述べていこう。Ref.1019の価格は決して安いとは言えないが、少なくとも数千万円以上の販売価格となるRef.6541よりは明らかに購入しやすい。製造本数もRef.6541よりもだいぶ増えたため、焦らずに根気よく探せば見つかるはずだ。

ファイヤーキッズに入荷した1968年製の個体について、オリジナティやコンディションを説明したいと思う。2002年と2005年にロレックスでメンテナンスした修理証明書が付く。それもあって、ダイヤルやブレスレットが交換されているが、その分だけ価格が抑えられている。ケースは極端な磨きの跡もなく、きれいなフォルムを充分に保っている。トリチウムの夜光は程よく変色しており、ヴィンテージらしい雰囲気がある。

結論を述べると、『ミルガウス Ref.1019』は、ヴィンテージウォッチとしての価値と実用性を併せ持つ優れた時計だ。購入をご検討している方はもちろん、気になっている方はぜひ一度実機を手にとってほしいと思う。

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戸叶庸之

戸叶庸之

神奈川県出身。大学在学中に出版社でのアルバイトからマスコミ関係の仕事に携

わる。その後、カルチャー誌、ファッション誌で編集・ライターとして活動をスタート。Web媒体は黎明期から携わり、藤原ヒロシ氏が発起人のWebマガジン「ハニカム」、講談社「フォルツァスタイル」などの立ち上げに参加。現在は、各種メディアで執筆、編集、ディレクションのほか、Webマーケティングや広告案件に従事。時計については、趣味でヴィンテージロレックスを収集しつつ、年代やジャンルを問わず、様々な角度から高級時計のトレンドを常に追いかけている。

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