柔道整体師という道を極めようとした男はヴィンテージ時計のみという専門性に惹かれた

柔道整体師からの転身
ファイアーキッズのウォッチメートとして昨年末から勤務している松井悠気さんは、異色の経歴を持っている。前職は、なんと柔道整体師だったのだ。整体師の前に柔道がつくとちょっと聞きなれない感じだが、柔道整体師は国家資格が必要な医療技術職。いわゆるセラピスト的な役割が大きい整体師ではなく治療を行う。わかりやすくいえば、保険適用の診療が行われているのが柔道整体師である。
「まず専門学校で3年間勉強して、その後、国家試験を受けます。そこで合格したら、これはちょっと特殊なんですが、僕は経験のある先生のもとで4年間お世話になったんです。お弟子という形ですね。そこでいろんな技を学ぶんですよ」
その後は開業する予定だったのだが、諸般の事情もあって、柔道整体師の仕事を離れることになる。
「その後は、整体とは関係ない仕事をしていまして、30歳を前にして以前から興味を持っていた洋服の世界に入りました。その時、お世話になっていたテーラーの方が素敵な腕時計をされていたんです。その頃、スーツスタイルに収まりの良い時計ってなんだろう?と考えるようになっていたので、思い切って聞いてみたら〇〇年代のヴィンテージ時計だと教えていただいて。そこではじめてヴィンテージ時計を認知したという感じですね」
そのテーラーの方の腕時計が忘れられない松井さんは、その後、ヴィンテージウォッチを購入する。
「私の1本目は、オメガの59年製『コンステレーション』でした。12面ではなくてプレージングダイヤルのタイプで、ミニッツサークルがちょっと窪んでるやつですね。それから時計の歴史に興味を持つようになって深掘りするようになったんです。どんどん沼にハマっていきました(笑)」

ヴィンテージ時計だけを扱ってるお店が理想
そして趣味が講じてというか、ヴィンテージ時計の知識が高まっていくと、もっと深く、ということで、ヴィンテージ時計のお店で働きたいという想いが強くなった。
「やはり、何かを知るのであればその真髄を知りたいと思いまして。ヴィンテー時計だけを扱ってるお店が理想なので、そうなるとファイアーキッズしかない、と。それで門を叩いたんです」
服の知識もあるので、洋服とヴィンテージ時計のお店だと半分はプロなので、仕事もしやすいのかと思うのだが。
「ファイアーキッズは創業以来30年間、ヴィンテージ時計だけなんですよ。現行品もジュエリーも置いていませんし。それがいいと思ったんです。逃げ場のないところで真摯にヴィンテージ時計と向き合って、戦っているな、というのを僕はすごく感じたんです。その仲間に加わりたいと思いました」
それでもイメージと実際のギャップはあるはず。実際に入店してみてどう感じたのだろうか。
「印象と違ったな、と思うことって多々あると思うんですけど、それが一切ありませんでした。本当に包み隠さず班っしてくれますし、外部へもそのまま発信しているんです。それからスタッフの方々も色があって。個性が強いっていうんですかね。そういうものを感じて、私もこの中でひとつの色になりたいと思ってやっています」
松井さんは柔道整体師として患者さんに接してきたわけだが、商品を購入しにくるお客さんとその辺の感覚は違うものなのだろうか。
「整体師は一応先生なので、意識の点で全然違いますね。しかも、知識ということにおいては腕時計はまだまだなので。でも、店頭に立てば新しいことをどんどん覚えますし、刺激もあります。ファイアーキッズには経験豊富な先輩がたくさんいますので、それも心強いですね」
そして、今年3月には銀座店という新店舗の立ち上げも経験できたのは、大きな財産になったということである。
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