チューダー モデル別Cal一覧 1950〜80年代|オイスタープリンスからサブマリーナまでETA系キャリバーの変遷

2026.05.08
最終更新日時:2026.05.08
Written by 編集部

チューダー(TUDOR)は、ロレックスのサブブランドとして1946年に設立され、ロレックスのオイスターケースにETA(Ebauches SA)系のキャリバーを搭載するという独自の戦略で展開されてきました。ロレックスが自社製キャリバーの開発に注力する一方、チューダーはETA系をベースとしたムーブメントを採用することで、ロレックスと同等の外装品質を維持しながらより手頃な価格帯を実現しています。

本記事では、1950年代から1980年代にかけてチューダーの各モデルに搭載されたキャリバーを年代順に整理し、一覧表として解説します。チューダーのヴィンテージモデルに関心のある時計愛好家の方に向けた、キャリバーリファレンスとしてお役立てください。


チューダーのキャリバー戦略 ― ロレックスとの関係

チューダー ヴィンテージモデル ロレックスオイスターケース

ケースはロレックス、ムーブメントはETA

チューダーのヴィンテージモデルを理解する上で最も重要なポイントは、「ケース・リューズ・ブレスレットはロレックスが供給し、ムーブメントはETA系キャリバーを採用している」という構造です。裏蓋には「ORIGINAL OYSTER CASE BY ROLEX GENEVA」の刻印が入り、リューズにはロレックスの王冠マークが付されています。

この二重構造は、チューダーの設立目的そのものを反映しています。ロレックスの創業者ハンス・ウィルスドルフは、ロレックスと同等の耐久性を持ちながらより手頃な価格の時計を提供するブランドとしてチューダーを構想しました。外装のクオリティをロレックスと共有しつつ、ムーブメントのコストを最適化することで、その理想を実現しています。

ETA系キャリバーの意味

チューダーに搭載されたETA系キャリバーは、スイスの大手エボーシュメーカーであるETA SA(Ebauches SA)が供給したムーブメントです。ETA系キャリバーは汎用性が高く、多くのスイス時計メーカーに採用された実績があります。チューダーはこれらのキャリバーを自社の品質基準に合わせて調整・搭載しており、信頼性の高い実用機として機能していました。

なお、チューダーが完全自社製キャリバー(MT5612等)を搭載するようになるのは2015年以降のことで、ヴィンテージ期のチューダーはETA系キャリバーの時代です。


1950年代のキャリバー一覧

1950年代は、チューダーがオイスタープリンスのブランドアイデンティティを確立していく時期です。

主要キャリバーと搭載モデル

キャリバー駆動方式搭載モデル例備考
Cal.390自動巻きオイスタープリンス(Ref.7909等)小薔薇ロゴ時代の初期モデルに搭載
Cal.1156手巻きオイスター(Ref.7934等)Fleurier(フルリエ)系手巻きキャリバー
Cal.59自動巻きオイスタープリンス(Ref.7950系)1950年代後半のプリンス系に搭載

※1950年代のチューダーはキャリバーの記録が断片的であり、上記は確認されている主要な例です。

1950年代の特徴

この時代のチューダーは、ロレックスのオイスターケースを採用しつつも、文字盤デザインやロゴの面で独自のアイデンティティを模索していた時期です。大きな薔薇マーク(デカバラ)が文字盤に配されるようになるのもこの時期からで、手巻きモデルと自動巻きモデルの両方が展開されていました。


1960年代のキャリバー一覧

チューダー 1960年代 オイスタープリンス サブマリーナ

1960年代は、チューダーのモデルラインナップが大きく充実した時期です。ドレスウォッチのオイスタープリンスに加え、サブマリーナやクロノグラフといったスポーツモデルも展開されるようになりました。

ドレスウォッチ系(オイスタープリンス / オイスターデイト)

キャリバー駆動方式搭載モデル例備考
Cal.2462自動巻きプリンスオイスターデイト(Ref.7966)1963〜64年製の個体で確認
Cal.2484自動巻きプリンスオイスターデイト(Ref.7990/4)フルーテッドベゼル仕様、1967年製
Cal.2772自動巻きプリンスオイスターデイト(Ref.7106/0)シールドマーク移行期、1969年製
Cal.1156手巻きオイスター(Ref.7984)小薔薇ロゴ、1966年製
Cal.1895自動巻きデイトデイ(Ref.7020)曜日表示付き、1969年製

サブマリーナ系

キャリバー駆動方式搭載モデル例備考
Cal.390自動巻きサブマリーナ(Ref.7928)1960年代前半のサブマリーナに搭載
Cal.2483自動巻きサブマリーナ(Ref.7016/0)1960年代後半のスノーフレーク針以前のモデル

1960年代の特徴

1960年代は文字盤ロゴがデカバラ(大薔薇)から小薔薇、そしてシールドマーク(盾型ロゴ)へと変遷する時期です。キャリバーもCal.2462からCal.2484、Cal.2772と世代交代が進み、チューダーのモデルラインナップの基盤が形成された10年間といえます。

サブマリーナ系ではRef.7928が代表的なモデルとして知られており、Cal.390が搭載されています。このモデルはロレックスのサブマリーナと共通のオイスターケースを採用しながら、ETA系キャリバーを搭載するというチューダーの基本構造を典型的に示しています。


1970年代のキャリバー一覧

チューダー 1970年代 サブマリーナ スノーフレーク針 Cal.2776

1970年代は、クォーツ危機の影響を受けながらも、チューダーが機械式時計の製造を継続した時期です。ケースサイズの拡大やスノーフレーク針の採用など、デザイン面での大きな変化が見られます。

ドレスウォッチ系

キャリバー駆動方式搭載モデル例備考
Cal.2722自動巻きプリンスオイスターデイト(Ref.7025/4)37mmケース、1972年製
Cal.1882/83自動巻きオイスタープリンスデイトデイ(Ref.7017/0)1970年製
Cal.2784自動巻きプリンスオイスターデイト(Ref.9050系)1970年代後半のモデルに搭載

サブマリーナ系

キャリバー駆動方式搭載モデル例備考
Cal.2776自動巻きサブマリーナ(Ref.9401/0、Ref.9411/0)スノーフレーク針、1970年代中期〜後期
Cal.2484自動巻きサブマリーナ(Ref.7021/0)スノーフレーク針初期モデル

クロノグラフ系

キャリバー駆動方式搭載モデル例備考
Cal.Valjoux 7734手巻きオイスターデイト クロノグラフ(Ref.7032、Ref.7149/0等)2レジスター、タキメーターベゼル
Cal.Valjoux 234手巻きオイスターデイト クロノグラフ(Ref.7031、Ref.7159/0等)3レジスター

1970年代の特徴

1970年代のチューダーで最も注目されるのが、サブマリーナに採用された「スノーフレーク針」です。雪の結晶のような独特の形状を持つ時針は、この時代のチューダー サブマリーナを象徴するデザイン要素として、現在も高い人気を誇っています。Cal.2776が搭載されたRef.9401/0やRef.9411/0が代表的なモデルです。

また、クロノグラフモデルではValjoux 7734やValjoux 234といったバルジュー社のキャリバーが採用されました。チューダーのクロノグラフは、ETA系の時計用キャリバーだけでなく、クロノグラフ専用キャリバーとしてバルジュー社製を採用していた点が特徴です。


1980年代のキャリバー一覧

1980年代は、クォーツ危機を乗り越えた機械式時計が再評価される時期であり、チューダーもモデルラインナップの刷新を進めた10年間です。

ドレスウォッチ系

キャリバー駆動方式搭載モデル例備考
Cal.2824-2自動巻きプリンスデイト(Ref.74000等)ETA 2824-2ベース、1980年代後半
Cal.2834-2自動巻きプリンスデイトデイ(Ref.76200等)デイデイト仕様

サブマリーナ系

キャリバー駆動方式搭載モデル例備考
Cal.2776自動巻きサブマリーナ(Ref.79090)1980年代後半、トリプロックリューズ採用
Cal.2824-2自動巻きサブマリーナ(Ref.79090後期)ETA 2824-2ベースへの移行期

クロノグラフ系

キャリバー駆動方式搭載モデル例備考
Cal.Valjoux 7750自動巻きクロノタイム(Ref.79160等)自動巻きクロノグラフ、1989年頃〜

1980年代の特徴

1980年代後半に登場したETA 2824-2ベースのキャリバーは、その後のチューダーの主力ムーブメントとなっていきます。25石、28,800振動/時の仕様を持つこのキャリバーは、信頼性と整備性に優れた汎用キャリバーとして世界中の時計メーカーに採用された実績があります。

クロノグラフでは、1970年代までの手巻きバルジュー(Valjoux 7734、234)から、自動巻きのValjoux 7750への移行が進みました。Valjoux 7750は自動巻きクロノグラフの定番キャリバーとして知られ、チューダー クロノタイムを皮切りにチューダーのクロノグラフモデルの主力ムーブメントとなっています。


キャリバーの系譜 ― ETA系からロレックス系への変遷

一貫したETA戦略

チューダーのヴィンテージ期(1950〜80年代)を通じて一貫しているのは、ETA系キャリバーの採用です。手巻き・自動巻き・クロノグラフを問わず、チューダーはETA(およびバルジュー等のスウォッチグループ傘下のエボーシュメーカー)からムーブメントの供給を受けていました。

年代主な搭載キャリバー系統特徴
1950年代Cal.390、Cal.59等チューダー初期の自動巻き
1960年代Cal.2462、Cal.2484、Cal.2772等モデルラインナップの拡充期
1970年代Cal.2776、Valjoux 7734・234等スノーフレーク期、手巻きクロノ
1980年代Cal.2824-2、Valjoux 7750等近代化の推進期
2015年〜MT5612等(自社製)完全自社キャリバー時代へ

ロレックスキャリバーとの比較

ロレックスが1960〜80年代に搭載していたCal.1520、Cal.1570、Cal.3035といった自社製キャリバーと、チューダーのETA系キャリバーは、設計思想が根本的に異なります。ロレックスは自社での一貫製造にこだわり、パワーリザーブや耐磁性能で独自の優位性を追求しました。一方、チューダーはETAの汎用キャリバーを採用することで、整備性の高さとパーツ供給の安定性を確保しています。

この違いは、ヴィンテージ市場における現実的なメリットにもつながっています。ETA系キャリバーは世界中の時計師が取り扱い慣れたムーブメントであるため、オーバーホールやパーツ交換の際に対応できる時計師の数が多いという利点があります。


ヴィンテージ チューダー購入時のキャリバー確認ポイント

キャリバー番号の確認: 裏蓋を開けてムーブメントに刻印されたキャリバー番号を確認するのが最も確実な方法です。チューダーのキャリバー番号は、多くの場合ETA社のキャリバー番号と対応しています。

年代との整合性: 特定のリファレンスに搭載されるべきキャリバーは年代によって決まっているため、ケースの製造年とキャリバーの導入年が矛盾しないかを確認することが重要です。

振動数の変化: 1960年代のキャリバー(18,000〜21,600振動/時)から1980年代のキャリバー(28,800振動/時)まで、振動数の向上が確認できます。振動数はムーブメントの動作音からもおおよその判別が可能です。

パーツの互換性: ETA系キャリバーはパーツの入手性が比較的良好ですが、1950〜60年代の古いキャリバーでは一部のパーツが入手困難になっている場合もあります。オーバーホールの際の実用面も考慮に入れることをお勧めします。


よくある質問

Q.チューダーのヴィンテージモデルにはなぜETA系キャリバーが搭載されているのですか?

A. チューダーは、ロレックスの創業者ハンス・ウィルスドルフが「ロレックスと同等の外装品質を持ちながら、より手頃な価格の時計を提供する」ことを目的に設立したブランドです。ケース・リューズ・ブレスレットはロレックスが供給し、ムーブメントにはETA系の汎用キャリバーを採用することで、コストの最適化を図っています。

Q.チューダーが自社製キャリバーを搭載するようになったのはいつですか?

A. 2015年に発表されたMT5612が、チューダー初の完全自社製キャリバーとされています。ヴィンテージ期(1950〜80年代)のチューダーは、すべてETA系またはバルジュー系のキャリバーを搭載しています。

Q.チューダーのキャリバーとロレックスのキャリバーに互換性はありますか?

A. 基本的に互換性はありません。チューダーのETA系キャリバーとロレックスの自社製キャリバーは設計が異なるため、ムーブメントの相互入れ替えはできません。ただし、ケース・リューズなどの外装部品はロレックスが供給しているため、一部の外装パーツには互換性があります。

Q.ETA系キャリバーのメンテナンスは難しいですか?

A. ETA系キャリバーは世界中で広く使用されている汎用ムーブメントであるため、対応できる時計師の数が多く、パーツの入手性も比較的良好です。ただし、1950〜60年代の古いキャリバーでは一部のパーツが入手困難になっている場合があるため、専門の時計師への相談をお勧めします。

Q.ヴィンテージ チューダーの裏蓋にロレックスの刻印があるのはなぜですか?

A. チューダーのケースはロレックスが製造・供給していたためです。裏蓋の「ORIGINAL OYSTER CASE BY ROLEX GENEVA」の刻印は、ロレックスのオイスターケース技術が使用されていることを示しています。リューズにもロレックスの王冠マークが入っています。


まとめ

チューダーの1950〜80年代のヴィンテージモデルには、ETA系をベースとした多彩なキャリバーが搭載されてきました。1950年代のCal.390から始まり、1960年代のCal.2462・Cal.2484・Cal.2772、1970年代のCal.2776やValjoux 7734、そして1980年代のETA 2824-2やValjoux 7750へと、チューダーのキャリバー史はETA系ムーブメントの進化の歴史でもあります。

ロレックスのオイスターケースにETA系キャリバーを搭載するという独自の戦略は、「ロレックスの堅牢性とETA系の整備性」という両方の長所を併せ持つ実用的なヴィンテージウォッチを生み出しました。キャリバーの系譜を辿ることは、チューダーというブランドの成り立ちと設計思想を理解する手がかりにもなります。

■ 1950年代 → Cal.390、Cal.59等の初期自動巻き
■ 1960年代 → Cal.2462/Cal.2484/Cal.2772(モデル拡充期)
■ 1970年代 → Cal.2776(スノーフレーク)/Valjoux 7734・234
■ 1980年代 → Cal.2824-2/Valjoux 7750(近代化)

writer

ranking