ジャガー・ルクルト ダーティダース|イギリス陸軍W.W.W.の歴史と魅力

2026.05.12
最終更新日時:2026.05.12

第二次世界大戦中、イギリス国防省(MoD)はスイスを中心とする12の時計メーカーに軍用腕時計の製造を委託しました。この12社が納入した時計は、のちに1960年代に公開された同名の映画『The Dirty Dozen(邦題:特攻大作戦)』と紐づけられ、「ダーティダース(Dirty Dozen)」と呼ばれるようになります。

ジャガー・ルクルト(JLC)もその1社として選ばれ、手巻きのCal.479を搭載したW.W.W.モデルを製造しました。本記事では、ダーティダースのJLC製個体の特徴、そして実際の個体を見る際に押さえたいポイントまでを詳しく解説します。

ジャガー・ルクルト ダーティダース W.W.W. Cal.479搭載モデル

ダーティダースとは——12社が製造したイギリス軍用時計

第二次世界大戦中、イギリス国防省(MoD)はスイスを中心とする12の時計メーカーに軍用腕時計の製造を委託しました。この12社が納入した時計は、のちに1960年代に公開された同名の映画『The Dirty Dozen(邦題:特攻大作戦)』と紐づけられ、「ダーティダース(Dirty Dozen)」と呼ばれるようになります。ジャガー・ルクルト(JLC)もその1社として選ばれ、手巻きのCal.479を搭載したW.W.W.モデルを製造しました。本記事では、ダーティダースのJLC製個体の特徴、そして実際の個体を見る際に押さえたいポイントまでを詳しく解説します。

12社の一覧

W.W.W.モデルを納入した12のメーカーは以下のとおりです。

メーカーケース素材の傾向搭載キャリバー(代表例)
ジャガー・ルクルト(JLC)真鍮にクロームメッキCal.479
IWCCal.83
オメガステンレスCal.30 T2
ロンジンCal.12.68Z
レマニアCal.27A
ヴェルテックス(バーテックス)真鍮にクロームメッキCal.59
グリュエン
ビューレン
シーマ(CYMA)ステンレスCal.234
エテルナ
ティマー
レコード

12社は共通規格に基づきつつも、ケース素材やサイズに各社の個性が表れています。シーマはステンレスを採用したメーカーの一つでW.W.Wモデルの中でも一番大ぶりな38mmケースが特徴です。ヴェルテックスは35mm幅のボリューム感があるケースで真鍮にクロームメッキを採用しています。

W.W.W.共通仕様

ダーティダースに共通するスペックを整理します。

  • 防水ケース:スクリューバック(ねじ込み式裏蓋)を採用した防水仕様
  • 文字盤:ブラック文字盤に視認性の高いアラビアインデックス
  • 夜光塗料:ラジウム夜光(当時の標準仕様)
  • 秒針:スモールセコンド(6時位置)
  • 裏蓋刻印:ブロードアロー(矢印マーク)、イギリス軍のシリアルナンバー、W.W.W.の刻印

裏蓋にはブロードアロー、Pで始まるイギリス軍のシリアルナンバー、メーカーのシリアルナンバーとW.W.Wの刻印が入っており、これがダーティダースのアイデンティティとなっています。


JLCのダーティダース——Cal.479搭載の軍用時計

ジャガー・ルクルト ダーティダース 文字盤とケースのディテール

個体の仕様

ジャガー・ルクルトのダーティダースは、第二次世界大戦でイギリス国防省がIWCやオメガなどのスイスの時計メーカー12社に発注したミリタリーウォッチの一つです。裏蓋の刻印W.W.Wはイギリス陸軍で採用された防水腕時計「Water-proof Wrist Watch」の略です。

JLC製ダーティダースの主な仕様は以下のとおりです。

項目内容
製造年代1940年代
ムーブメント手巻き Cal.479
ケース素材真鍮にクロームメッキ
文字盤ブラック
裏蓋ブロードアロー刻印、W.W.W.刻印

文字盤とケースの状態について

JLCのダーティダースは80年以上前に製造された軍用時計であるため、個体ごとにコンディションは異なります。文字盤の夜光塗料が入れ直しされている個体もありますが、ミリタリーウォッチらしい使い込まれた雰囲気に仕上がっているものが多く見られます。ケースは全体的にメッキの剥がれが生じている個体が一般的です。

真鍮にクロームメッキというケース素材は経年でメッキの剥がれが生じやすく、これもダーティダースならではの経年変化として捉えられています。

他メーカーとの比較

ダーティダース12社のなかで、JLCはマニュファクチュールとしての格の高さから特に注目される存在です。同じくダーティダースに参加したオメガはCal.30 T2を搭載したステンレスケースの個体が見られます。シーマはW.W.Wモデルの中でも一番大ぶりな38mmケースが特徴で、レマニアの個体には文字盤の表面に荒れや変色が見られるものもあり、80年以上の歳月を経た軍用時計ならではの風格を感じさせます。

12社それぞれに個性がありますが、JLCが軍用の「兵士のための道具」を製造したという事実そのものが、時計史における貴重なエピソードです。


ダーティダースを見るときのチェックポイント

ジャガー・ルクルト ダーティダース 裏蓋のブロードアロー刻印とシリアル

ポイント1:文字盤のオリジナル性

ダーティダースは長い年月を経ているため、文字盤がリダン(再塗装)されていたり、夜光塗料が入れ直されている個体が少なくありません。JLCの個体でも夜光塗料が入れ直しされているものがあります。一方、ヴェルテックスの個体ではオリジナルのラジウム夜光が残っているケースもあり、オリジナル度合いは個体差が大きい部分です。

ポイント2:裏蓋の刻印

ブロードアロー(矢印マーク)とW.W.W.の刻印、そしてイギリス軍のシリアルナンバーは、ダーティダースであることを証明する最も重要な要素です。裏蓋にブロードアロー、Pで始まるイギリス軍のシリアルナンバー、メーカーのシリアルナンバーとW.W.Wの刻印が入っていることを確認しましょう。

ポイント3:ケースのコンディション

真鍮にクロームメッキのケース(JLC、ヴェルテックス等)はメッキ剥がれが、ステンレスケース(オメガ、シーマ等)は小傷が見られることが一般的です。オメガのステンレスケース個体は大きなアタリもなく軍用としては良好なコンディションのものも見られるなど、素材によりコンディションの出方が異なります。


よくある質問(FAQ)

Q.ダーティダースの「ダーティ」とはどういう意味ですか?

A. 「ダーティダース(Dirty Dozen)」は1967年公開の映画『特攻大作戦』(原題:The Dirty Dozen)に由来する俗称です。イギリス国防省が定めた規格に沿って納めた12の時計メーカーと、この映画の名称が結びついて定着しました。

Q.JLCのダーティダースに搭載されているCal.479はどんなムーブメントですか?

A. Cal.479は手巻き式のムーブメントで、JLCのダーティダースに搭載されています。シンプルな構造で信頼性が高く、戦場での過酷な使用に耐える設計です。

Q.ダーティダースの12社コンプリートは可能ですか?

A. 12社のなかにはヴェルテックスやティマーなど、現存する個体数が非常に少ないメーカーも含まれます。すべてを揃えるのは極めて困難ですが、コンプリートを目指すコレクターも存在します。各メーカーの特性を理解したうえで、状態の良い個体に出会ったときに判断するのが現実的です。

Q.MoDダイヤルとは何ですか?

A. オメガのダーティダースには、メーカー名が入っていない文字盤の個体が存在します。これは後年にイギリス国防省(MoD)において文字盤が交換されたもので、「MoDダイヤル」と呼ばれています。コレクターの間では希少な存在として扱われています。


まとめ

ダーティダースは、第二次世界大戦中にイギリス国防省がスイスを中心とする12社の時計メーカーに製造を委託した軍用腕時計群です。JLCはCal.479を搭載したモデルでこのプロジェクトに参加し、マニュファクチュールとして「兵士の道具」を手がけたという事実は、時計史のなかでも特別なエピソードとして語り継がれています。

ブラック文字盤にブロードアローの刻印——80年以上前の戦場で使われた時計が、いま手元にあるという体験は、ヴィンテージ時計ならではの深みです。文字盤のオリジナル性、裏蓋の刻印、ケースの素材とコンディションをしっかり確認したうえで、自分だけの一本を見つけてください。

ぜひ実際に手に取ってご覧ください。

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