創業160周年を迎えたゼニスが復活させた伝説のムーブメント搭載モデルが登場

2025.06.05
Written by 編集部

計時コンクールがもたらす名声

20世紀中ば、天文台が行う精度試験は非常に重要なものだった。計時コンクールがもたらす名声は大きなもので、各ブランドは入念に準備したムーブメントをもってこの試験に臨ん だのだった。1897年から積極的にコンクールに参加していたゼニスは、 歴史を通じて驚異的な2333件ものクロノメトリー賞を獲得するに至っている。

その中でも傑出した存在感を示したムーブメントが、伝説的なキャリバー135である。“135”の数字は、直径13リーニュヌーシャテル天文台コンクールの腕時計部門で許されている最大サイズ)と厚さ5mmにちなんでいる。

そんなキャリバー135は、1949年から1962年まで製造された。そして、市販モデル用の「135」と天文台試験専用の「135-O」の2つのバージョンで展開。特筆すべきは、ゼニスのクロノメーター職人として名高いシャルル・フレックとルネ・ギガックスが調整を担当した「135-O」が、ヌーシャテル天文台の腕時計部門において、1950年から1954年まで5年連続で1位を獲得したことである。 

オリジナルの精神を継承

今年、ゼニスは新たな取り組みとして、そのキャリバー135を蘇えらせ、新作『G.F.J.』に搭載 したのである。『G.F.J.』の名称は1865年にマニュファクチュールを創設したジョルジュ・ファーブル=ジャコのイニシャルに由来する。

G.F.J.
手巻き(Cal.135)、プラチナ950ケース、ケース径39.15mm、5気圧防水、695万2000円

この復刻版キャリバー135は、オリジナルの精神を継承しながらも、21世紀の技術と素材を取り入れて再設計されている。オリジナルのサイズ、外観、構造を踏襲しつつ、オフセットのセンターホイールを採用することで大型テンプを収めるスペースを確保し、精度と安定性を向上させている。

パワーリザーブは当時の40時間から72時間へと大幅に延長され、135-Oを象徴するダブルアロー形の調速機構が精密な調整を可能にしている。しかも、このムーブメントは日差±2秒以内という驚異的な精度に調整されている。COSC認定も取得しており、現代の高級機械式時計においても卓越した水準となっている。

造形的には、部品一つひとつに緻密な仕上げが施されており、ブリッジに施された“ブリック”ギョーシェ仕上げは、赤と白のレンガとジョルジュ・ファーブル=ジャコのイニシャル「G.F.J.」が目を引く。これはゼニス マニュファクチュールの特徴的なファサードから着想を得たものだ。さらには香箱にサーキュラーサテン仕上げが、丸穴車にはブラックポリッシュ仕上げが施されている。

エレガンスとモダンの融合

一方、外装はキャリバー135が生まれた時代に忠実に、1950年代のエッセンスを捉え、ヴィンテージのエレガンスとモダンなアクセントが軽やかに融合されている。

39mmのプラチナ製ラウンドケースは、段差の付いたベゼルと曲線的なラグが特徴。薄型のシルエットと彫刻的なラインは、ヘアラインとポリッシュ仕上げの絶妙な組み合わせにより優美に引き立てられている。ノッチが刻まれたリューズには、「G.F.J.」のイニシャルも刻まれている。

文字盤を見ると、そこは多層構造で、外周リングには「ブリック」ギョーシェ模様が施され、マニュファクチュールの象徴的なファサードを思わせる意匠となっている。中央部分はディープブルーのラピスラズリで作られ、この石に含まれるパイライトが星空を想起させる煌めきを放 っているのだ。

ゼニスCEOはこの新作を発表するにあたって「キャリバー135は技術的偉業であるだけでなく、精度を象徴する真のアイコンとなりました。創業160周年という節目にこのキャリバーを復活させたのは、そのレガシーを讃え、また新たな世代のコレクターに伝えていくためでもあります」と述べている。

伝説的なムーブメントを単なる過去の再現ではなく現代の感性に響く形へと再解釈し、発表したのである。

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