オメガ Cal.321の伝説|スピードマスターを月に送ったムーブメント|FIRE KIDS Magazine

2026.03.21
最終更新日時:2026.03.21
Written by 編集部

Cal.321は、オメガの歴史上最も伝説的なムーブメントです。1957年に初代スピードマスター(CK2915)に搭載されて以来、1968年まで約11年間にわたりスピードマスターの心臓部として使用されました。

そしてこのCal.321こそが、1969年のアポロ11号で月面に降り立ったスピードマスター プロフェッショナルに搭載されていたムーブメントです。「月に行った時計」——その称号を支えた機械的な心臓について、徹底解説します。

Cal.321とは何か

レマニア由来のコラムホイール式クロノグラフ

Cal.321の起源は、スイスのムーブメントメーカー「レマニア」が製造したCal.2310にあります。オメガはこのCal.2310をベースに改良を加え、自社のCal.321として採用しました。

項目スペック
種類手巻きクロノグラフ
石数17石
振動数18,000振動/時
クロノグラフ機構コラムホイール式
レジスター3レジスター(スモセコ+30分+12時間)
搭載期間1957年〜1968年

コラムホイール式の価値

Cal.321のクロノグラフ制御機構には「コラムホイール」が使われています。コラムホイール式は、カム式と比べてプッシャーの操作感が格段に滑らかで、スタート/ストップ/リセットの切替が正確。現代の高級クロノグラフ(ロレックス デイトナ、パテック・フィリップなど)にしか採用されない贅沢な機構です。

Cal.321搭載スピードマスターの世代

初代 CK2915(1957〜1959年)

スピードマスターの原点。ブロードアローハンド(矢印型時針)とタキメーターベゼルが特徴。初代はプロフェッショナル用ではなく、レーシングウォッチとして開発されました。ケースサイズは38.5mmで、ラグ幅18mmのシンプルなデザインです。

2代目 CK2998(1959〜1962年)

アルファハンドに変更。ベゼルの形状も改良され、より洗練されたデザインに進化しました。このモデルからNASAの目に留まり、宇宙開発との関係が始まります。

3代目 ST105.003(1963〜1966年)

NASAがジェミニ計画で使用した世代。1965年、エド・ホワイトが史上初の宇宙遊泳を行った際に着用したのがこのモデルです。ここからスピードマスターの「宇宙」との結びつきが始まります。

4代目 ST105.012(1964〜1968年)

アポロ11号のバズ・オルドリンが月面で着用していたのがこのRef.です。Cal.321搭載の最終世代であり、「ムーンウォッチ」の称号を持つ最もアイコニックなモデル。1969年7月21日、人類が初めて月面に足を踏み入れた瞬間、バズ・オルドリンの手首にはこの時計がありました。

Cal.321 vs Cal.861|何が変わったのか

1968年以降、スピードマスターのムーブメントはCal.321からCal.861(後のCal.1861)に変更されました。この変更がコレクター市場における両者の評価を大きく分けています。

項目Cal.321Cal.861
クロノグラフ機構コラムホイール式カム式
石数17石17石
振動数18,000振動/時21,600振動/時
操作感滑らかやや硬い
生産コスト高い低い
搭載期間1957〜1968年1968年〜

Cal.861への変更は、コスト削減と量産性の向上が目的でした。Cal.321のコラムホイールは製造に高い精度と手間が必要だったため、大量生産には不向きだったのです。

Cal.321搭載モデルがコレクター市場で高く評価される3つの理由

① 月に行ったムーブメント

アポロ11号という人類史上最大の偉業と結びついた歴史的価値は、他のどのムーブメントも持ちえないものです。「月に行った」という事実は、時計の価値の次元を超えています。

② コラムホイール式の希少性

Cal.861以降はカム式に変更され、コラムホイール搭載は限られた1957〜1968年のみ。現代の高級クロノグラフにしか採用されない機構が、量産時代の前に存在したことがCal.321の技術的価値を高めています。

③ 製造終了から半世紀以上の経過

1968年に製造が終了して半世紀以上が経過しました。良好な状態の個体は年々減少しており、今後さらに希少性が増すと予測されています。

よくある質問

Q: Cal.321搭載のスピードマスターは高価ですか?

A: はい、Cal.861/1861搭載のスピードマスターと比べて高価です。「月に行ったムーブメント」というストーリーとコラムホイール式の希少性が価格に反映されています。

Q: Cal.321のオーバーホールは可能ですか?

A: 可能ですが、コラムホイール式クロノグラフの修理に精通した時計師への依頼が必要です。パーツの入手がやや困難になりつつあるため、オーバーホール費用はCal.861搭載モデルより高くなる傾向にあります。

Q: オメガが2019年に復刻したCal.321とヴィンテージの違いは?

A: オメガは2019年に新生Cal.321をスピードマスター ムーンウォッチ 321に搭載して発表しました。復刻版はオリジナルの設計を忠実に再現しつつ、現代の製造技術で精度と信頼性を向上させています。ヴィンテージのCal.321は「当時の空気」を感じられるオリジナルの体験であり、復刻版とは異なる魅力があります。

まとめ

Cal.321は、「月に行ったムーブメント」という唯一無二の称号を持つ、オメガの歴史上最も偉大なキャリバーです。コラムホイール式の精密な機構、17石の洗練された設計、そしてアポロ計画という人類史との結びつき——Cal.321搭載のスピードマスターは、時計を超えた「歴史の証人」です。1957年から1968年という限られた11年間にのみ製造されたこの傑作は、今後さらに希少性を増していきます。

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