IWC Cal.89 搭載モデル解説

2026.05.19
最終更新日時:2026.05.19
Written by 編集部

IWC Cal.89は、「オールドインター」と呼ばれるヴィンテージIWCの手巻きモデルに広く搭載されたキャリバーです。ラウンドケースのドレスウォッチからヨットクラブのスポーツウォッチ、さらには軍用のマーク11まで、幅広いモデルに搭載されてきました。

この記事では、Cal.89の概要、搭載モデルのバリエーション、そして購入時に確認すべきポイントを解説します。


Cal.89の概要

IWC Cal.89 搭載モデル
項目スペック
種類手巻き
耐震装置あり(後期型)/ なし(初期型)

Cal.89には耐震装置の有無やハック機能(秒針停止機能)の有無によるバリエーションが存在します。


Cal.89の系譜

IWC Cal.89 文字盤

Cal.88——Cal.89の前身

Cal.89の前身であるCal.88は、スモールセコンド仕様の手巻きムーブメントです。36mmのステンレスケースにスモールセコンドを備えた構成で、アラビア数字ダイヤルや各種針形状との組み合わせが展開されました。製造期間が短く、センターセコンドのCal.89と同じく丁寧な仕上げが施されたキャリバーです。

Cal.88は製造期間が短く、Cal.89搭載モデルに比べて確認できる個体数が限られています。

Cal.89のバリエーション

Cal.89のバリエーションは以下のとおりです。

バリエーション特徴搭載モデル例
Cal.89基本型。センターセコンドラウンドケース各種
Cal.89 耐震装置付きインカブロック追加の後期型ヨットクラブ(手巻き)
Cal.89 ハック付き秒針停止機能搭載の軍用仕様マーク11(RAAF等)

Cal.89搭載モデルのバリエーション

ラウンドケース・ドレスウォッチ

Cal.89が最も多く搭載されたのは、IWCのラウンドケース・ドレスウォッチです。オールドインターらしいパールドットの分点が配置された文字盤に、シンプルなラウンド型ケースを組み合わせた、IWCらしい質実剛健さが感じられるモデルです。

1960年代後半〜1970年代のモデルでは、直線的なラグデザインが採用されています。ケースサイズは34〜36mmで、カジュアルからビジネスまで使いやすいサイズ感です。

年代ケースサイズラグ形状ケース素材
1950年代36mmファンシーラグ / ツイストラグ18KYG / SS
1960年代35mmシンプルラグSS
1970年代34mm直線デザインSS

18金無垢モデル

Cal.89は金無垢ケースにも搭載されました。1950年代製の18金無垢Cal.89搭載モデルは、ケース幅36mmと当時としては大きめのサイズです。シャンパンゴールドの文字盤に12・3・6・9のアラビア数字を配した上品な構成が代表的です。

1952年頃の18金無垢Cal.89搭載モデルでは、18Kイエローゴールド製ケースに剣針(アルファハンド)を組み合わせたバリエーションも確認されています。裏蓋内側には18金の証である「0.750」の刻印が入ります。ドーフィンハンドだけでなくアルファハンドも展開されていた点に、当時のバリエーションの豊かさがうかがえます。

ヨットクラブ(手巻きモデル)

ヨットクラブは通常自動巻きのイメージがありますが、Cal.89搭載の手巻きモデルも存在します。1974年製のブルーダイヤル・手巻きCal.89搭載モデルは、耐震装置付きのCal.89がヨットクラブのスポーティなケースに収められた希少な組み合わせです。自動巻きが主流のヨットクラブにおいて、手巻きCal.89搭載モデルは特に珍しい存在です。

マーク11(軍用パイロットウォッチ)

Cal.89の軍用仕様は、マーク11に搭載されました。オーストラリア空軍パイロットウォッチとして1957年に製造されたマーク11には、Cal.89のハック機能付きバージョンが搭載され、二重構造の頑丈な造りが採用されています。

軍用マーク11は製造から数十年を経ているため文字盤やケースに経年変化が見られることもありますが、軍用時計ならではの堅牢な造りと歴史的背景が大きな魅力です。


Cal.89を選ぶ際のチェックポイント

ポイント1:耐震装置の有無

初期型のCal.89には耐震装置がなく、後期型にはインカブロックが追加されています。日常使いを考える場合は耐震装置付きの後期型が実用的です。

ポイント2:文字盤のコンディション

製造から50年以上が経過しているため、多少の経年変化は避けられません。表面の荒れ、ポツポツとしたシミ、インデックス周りの劣化など、個体によって状態は異なります。オリジナル文字盤の経年変化を味わいとして受け入れるか、リダン文字盤のクリーンさを取るかは好みの問題です。

ポイント3:ケースの状態とサイズ

Cal.89搭載モデルは34〜36mmのケースサイズが中心で、カジュアルからビジネスまで使いやすいサイズ感です。

ケース状態については、小傷はあっても目立つ損傷がなければ良好なコンディションといえます。小傷の有無よりもケース形状の健全さ(ラグのシャープさ、ケースの厚み)を確認することが重要です。

ポイント4:お魚リューズの有無

スクリューバックタイプの裏蓋に、当時の防水時計であることを示すお魚リューズが付いているモデルがあります。お魚リューズ(魚モチーフのリューズ)はオールドインターの象徴的なディテールで、オリジナルが残っていればコレクション上の価値も高まります。


こんな方におすすめしたい

IWC Cal.89 ムーブメント

手巻き式の時計に興味がある方

Cal.89は手巻きキャリバーで、毎日リューズを回してゼンマイを巻く操作が楽しめます。手巻き式ならではの所作を重視する方に適したキャリバーです。

シンプルなドレスウォッチを探している方

Cal.89搭載のラウンドケースモデルは、34〜36mmのケースサイズにシンプルな文字盤を組み合わせた端正なデザインです。ビジネスからカジュアルまで使いやすいサイズ感が魅力です。

ヴィンテージIWCの入門として検討している方

オールドインターの中でもCal.89搭載モデルは比較的選択肢が多く、ラウンドケースからヨットクラブ、金無垢まで幅広いバリエーションの中から選べます。


よくある質問

Q.「オールドインター」とは何ですか?

A. 1970年代以前に製造されたIWCの時計を指す日本独自の通称です。Cal.89やペラトン式Cal.8531/8541を搭載したヴィンテージモデルが「オールドインター」として親しまれています。

Q.Cal.89のオーバーホールは現在も可能ですか?

A. 可能です。シンプルな構造のため整備性に優れたキャリバーであり、専門の時計師による定期的なオーバーホールで長期的に使用できます。

Q.Cal.88とCal.89の違いは何ですか?

A. Cal.88はスモールセコンド仕様、Cal.89はセンターセコンド仕様です。Cal.88はCal.89の前身にあたるキャリバーで、製造期間が短く希少性が高いのが特徴です。どちらもIWCらしい丁寧な仕上げが施されたキャリバーです。

Q.Cal.89搭載モデルの中で特に人気のあるバリエーションは?

A. ラウンドケースのドレスウォッチが最も流通量が多く、選びやすい定番です。ヨットクラブの手巻きモデルは希少性が高く、軍用のマーク11は実際に空軍に納入された歴史を持つモデルとして注目されています。


まとめ

IWC Cal.89は、オールドインターを代表する手巻きキャリバーです。ラウンドケースのドレスウォッチから18金無垢モデル、ヨットクラブの手巻き仕様、そして軍用マーク11まで幅広いモデルに搭載されてきました。シンプルな構造の手巻きキャリバーとして、ヴィンテージIWCの選択肢を広げてくれる存在です。

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