腕時計はメンズのドレススタイルを深めていくために欠かせないアイテムだ
文=長谷川剛
時計好きに「あなたの時計、見せてください」と依頼するこの企画。今回は大人のトラッドな着こなし系YouTubeを配信する「ひらりん」さんにインタビュー。メンズスーツを筆頭とする奥深い服装の世界にハマり込み、男性ファッションの掘り下げを始めたと語るひらりんさん。リアルクローズかつ高感度なアイテムを紹介する動画は、無理なく王道のお洒落を楽しみたい人にうってつけのもの。もちろん、メンズスタイルの要である時計についても一家言持つひらりんさん。今回は、そんな大人ファッションの伝道師が愛用する時計についてうかがった。
若い頃は古着を着用
しっかりとした本業を持ちながら、趣味のファッションをマイペースにて配信しているひらりんさん。そもそもファッションに本格的に目覚めたのは、ある知人の一言から。若いころに古着を好んで着用していたところ、面と向かって「もう少しキレイにしたら」と言われ、やおら開眼。以来セレクトショップに足しげく通い、そして自身の祖父がテーラーだったことの再確認も切っ掛けとなり、スーツスタイルに深くコミットするようになったと振り返る。
「改めて親に尋ねたところ、母の成人式のスーツを仕立てたのは、実はお爺ちゃんだったとか。僕の成人式のスーツこそ祖父のものではないが、そのお爺ちゃんに手直ししてもらって着ていたと教えられました。そこからテーラードへの意識が強くなり、いわゆるクラシコイタリア系スーツを数着手に入れ、ドレススタイルを楽しむようになったのです」
現在は歴史ある定番を軸に、リアルなコーディネイトや情報を発信するなか時計についても言及。やはりそこでもひらりんさんは、トラッドマインド漂うモデルを紹介している。
「メンズのドレススタイルを深めていくにあたり、時計は欠かせないアイテムと気付きました。とはいえ、当初はGショックやタイメックスなど、軽みのあるものを選んでいました。しかし、より装いが本格化していくと、どうしてもディテールを含めた完成度が気になります。そこで当時、認知度の高かったロレックスのサブマリーナ(Ref.16610)を入手。今から約6年ほど前のこと。6桁モデルなどの現行品は、やや大振りに見えたので、比較的控えめな前世代モデルを選びました。ただ、プロダクトとしては申し分ないサブなのですが、皆から“イイ時計だね”とホメれるより、“コレって高いヤツでしょ?”と言われることが多くなり、それがとても気になっていました」
30歳記念の腕時計
そんなひらりんさんが、いろいろ考慮を重ねてついに手に入れた一本こそ、パテック フィリップだ。
「いつかは手に入れたいと思っていました。しかしチャンスが突然に訪れてしまったのです。そもそも30歳の記念に何か良い時計を買おうと思っていました。当初はブレゲのマリーン2を探していたのですが、実際にショップで実機をチェックしたところ、文字盤の色合いが少しイメージと違っており……。あれこれ迷っていたら、この日本限定カラトラバ(Ref.3923A)が目に入り、一発で気に入ってしまったというワケです(笑)。インデックスや針などの素材がWGにも関わらず、ケースがSSということもあり、非常に日本人らしい奥ゆかしさを感じさせるところなど、随所に好ましいポイントがあったのです」
かつてはドレッシーなスーツにGショックを合わせていたひらりんさん。それは装いがキメキメになるのを避ける、彼らしい“抜き”のテクニック。そういう意味でカラトラバは、キメ時計の中のキメモデルである。そこでひらりんさは、購入時に即ストラップを外すよう店頭にてオーダーした。
「もう購入を決心した瞬間に、クロコダイルではなくナトーバンドにしようと考えていました。そうすることで、自分のコーディネイトに馴染みやすいと考えたのです。このバンドはアマゾンで適当に買ったもの。しかし仕上りには非常に納得しています(笑)」
男らしくも非常にエレガントな時計
予定どおり(?)時計の魅力にハマっていくひらりんさん。その次に手に入れたのがカルティエのサントスだ。サントス ガルベと非常に似たスクエアルックだが、こちらは1980年代に製造されたカルティエ ドゥ サントス。男らしくも非常にエレガントな時計である。
「このサントスは、ガルベとは異なるフラットなデザインがポイント。原初のサントスに似たデザインと言われており、そこが個人的に気に入っています。そしてコレを入手したもうひとつの理由が、奥さんのサントス オクタゴンと揃えることで、ペアになるところ。実は僕より先に奥さんがオクタゴンを手に入れており、自分はソレに寄せた感じです(笑)。どちらも80年代のヴィンテージです」
二人で出掛けるときに息の合ったペアスタイルにしたいと考えたひらりんさん。しかし旦那さんのサントスを見つけたとき、奥さんは“また高い買い物を…”と反応したのだそう。男の時計道は、やはり平坦なモノではないのだ。さらに直近にもう一本手に入れているのだ。1970年代製と思われる手巻きのカルティエ タンク マストであるが、実はひらりんさんは、以前にも同様のモデルを所持していた過去がある。
「やはりカルティエの時計は非常にエレガント。クラシックな味わいと同時に、着けることにより装いを上品に見せてくれる特別な一本だと考えます。その思いが強くなればなるほど、結婚を期に手放してしまったタンクがしのばれて……。とあるネットのフリマサイトで見つけたときに、ついつい我慢できず買ってしまいました(笑)。非常に手頃な値段ゆえ、面白半分というのもあったのですが、これが一応ホンモノということで、今も使い続けています。まあ、状態もある意味値段なりの部分があり、このタンクに関しては、本当に気兼ねなく使い倒しているんです(笑)」
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