ジャガー・ルクルト Cal.K1071・K1072 解説|ヴァシュロンやAPにも供給された名機の魅力

2026.05.05
最終更新日時:2026.05.04
Written by 編集部

ヴィンテージウォッチの世界では、文字盤やケースのデザインに目が行きがちですが、その心臓部であるムーブメントにこそ、メーカーの技術と哲学が凝縮されています。ジャガー・ルクルトが製造したCal.K1071とCal.K1072は、自社モデルだけでなく、ヴァシュロン・コンスタンタンやオーデマ・ピゲといった世界最高峰のブランドにも供給された名機です。

この記事では、Cal.K1071・K1072の仕様や特徴、搭載モデルの違い、そしてジャガー・ルクルトが他ブランドに供給した「K」付きキャリバーの系譜について解説します。ヴィンテージのドレスウォッチに関心をお持ちの方に、ムーブメントという視点から時計選びの参考にしていただければ幸いです。

ジャガー・ルクルト Cal.K1071搭載 ヴァシュロン・コンスタンタン 文字盤

ジャガー・ルクルトの「K」付きキャリバーとは

ジャガー・ルクルトのキャリバー番号には、先頭に「K」が付くものと付かないものがあります。この「K」は、他ブランドへのOEM(相手先ブランド)供給用に製造されたムーブメントを示す記号です。ジャガー・ルクルトは自社ブランドの時計を製造するだけでなく、ヴァシュロン・コンスタンタン、オーデマ・ピゲなど、いわゆる「雲上ブランド」と呼ばれるメーカーにもムーブメントを供給してきた歴史があります。

たとえば、ジャガー・ルクルトの自社モデルであるマスターマリーナには自動巻きのCal.K883が搭載されており、ジオマチック クロノメーターにはCal.K881Gが搭載されています。

こうした「K」付きキャリバーは、自社使用であれOEM供給であれ、ジャガー・ルクルトの高い技術力を証明するものです。なかでもCal.K1071とCal.K1072は、ヴァシュロン・コンスタンタンの薄型ドレスウォッチに数多く搭載され、雲上ブランドの名に恥じない仕上がりを実現しています。


Cal.K1071 ── ノンデイト自動巻きの完成形

基本仕様と特徴

Cal.K1071は、ジャガー・ルクルトが製造した自動巻きムーブメントです。金無垢ローターを搭載し、ノンデイト(日付なし)仕様の3針モデルに採用されています。ヴァシュロン・コンスタンタンの1960年代製ラウンドオートマチックRef.6562では、ドーフィンハンドとバーインデックスを組み合わせた視認性の高いダイヤルに、スクリューバックのステンレスケースという構成で搭載されています。

また、Ref.6378の18金無垢ラウンドケースにも同キャリバーが搭載されており、スクリューバックを採用したしっかりとした厚みのある自動巻きモデルとして、ヴァシュロンらしい上品な佇まいが特徴です。18金無垢ローターを備えています。

ジャガー・ルクルト Cal.K1071 ヴァシュロン・コンスタンタン ケース

搭載が確認されているモデル

Cal.K1071およびその派生(K1071/1)の搭載が確認されているヴァシュロン・コンスタンタンの代表的なモデルを整理します。

リファレンスケース素材キャリバー特徴
Ref.6562ステンレスCal.K10713針ノンデイト、スクリューバック
Ref.637818KYGCal.K107118金無垢ローター、スクリューバック
Ref.642618KYGCal.K10712トーンダイヤル、クロノメーターロワイヤル同等ケース
Ref.6394018KWGCal.K1071マルタ十字、刻みベゼル
Ref.6562ステンレスCal.K1071/13針ノンデイト、ジュネーブシール
Ref.659418KYGCal.K1071/1チューラーWネーム

1960年代製のRef.6426は、クロノメーターロワイヤルと同等のケースが用いられており、ヴァシュロンの中でも上位グレードのケースにCal.K1071が組み合わされていたことがわかります。また、スイスの高級宝飾店チューラー(TURLER)とのダブルネーム個体にもCal.K1071/1が搭載されており、シンプルながら造りの良さが感じられる上品なモデルです。


Cal.K1072 ── カレンダー付き自動巻き

Cal.K1071との違い

Cal.K1072は、Cal.K1071にカレンダー(日付表示)機能を追加した派生キャリバーです。ヴァシュロン・コンスタンタンのRef.6562には、Cal.K1071搭載のノンデイトモデルとCal.K1072/1搭載のデイト付きモデルの両方が存在しています。

1970年代のヴァシュロン・コンスタンタン ラウンドオートマチック Ref.6562では、薄型ラウンドケースに3針カレンダーというシンプルな構成ながら、ブランドの象徴であるマルタ十字が文字盤上で存在感を放っています。Cal.K1072/1には18金ローターが採用されており、ジュネーブシールの刻印が施された個体も確認されています。ジュネーブシールはパテック・フィリップにもある厳しい規格であり、このキャリバーの品質の高さを裏づけるものです。

日付の操作方法

Cal.K1072/1搭載モデルはクイックチェンジ機構を持たないため、日付の早送りは夜中12時付近で針を行き来させて行う方式となります。この点は、実用面で知っておきたいポイントです。



「K」付きキャリバーの系譜 ── 手巻きから薄型自動巻きまで

Cal.K1071・K1072以外にも、ジャガー・ルクルトからヴァシュロン・コンスタンタンに供給されたキャリバーは多岐にわたります。代表的なものを紹介します。

ジャガー・ルクルト「K」キャリバー OEM供給ムーブメント

手巻きキャリバー

Cal.K1001/2 ── ヴァシュロン・コンスタンタンの18KWGラウンドケース(Ref.2006、1970年代製)や、18金無垢スクエアケースのエクストラフラットモデルに搭載が確認されています。ジュネーブシールが施された個体もあり、仕上がりの高さに定評があります。

Cal.K1002 / K1002/2 ── ヴァシュロンの薄型手巻きモデルに広く搭載されたキャリバーです。Ref.6406(18KWG)、Ref.6563、Ref.6903など複数のリファレンスで採用されています。チューラーとのダブルネーム個体(Ref.6564)にもCal.K1002が搭載されており、仕上がりの美しさに定評があります。

Cal.K1014 ── 1970年代製のパトリモニー(Ref.34014、18KYG)に搭載された手巻きキャリバーです。18KWGのトノーケース(Ref.2014)にも同キャリバーが確認されており、いずれも仕上がりの高さが特徴です。

薄型自動巻きキャリバー Cal.K1120

ジャガー・ルクルトのCal.920をベースにしたCal.K1120は、ヴァシュロン・コンスタンタンの1970年代製薄型自動巻きモデルに搭載されています。Ref.7592やRef.7409で採用が確認されており、21金ローターを搭載しています。厚さ約7mmと自動巻きとしては非常に薄く造られている点が特筆に値します。

このCal.920系統は、パテック・フィリップのノーチラスやオーデマ・ピゲのロイヤルオークにも採用された著名なムーブメントであり、ヴァシュロンがCal.K1120として搭載していたことは、ジャガー・ルクルトのムーブメント製造技術がいかに高く評価されていたかを物語っています。

オーデマ・ピゲにも供給された「K」キャリバー

ヴァシュロン・コンスタンタンだけでなく、オーデマ・ピゲにもジャガー・ルクルト製の「K」付きキャリバーが供給されています。Cal.K2072/1は18金無垢ローターを搭載した自動巻きキャリバーで、Cal.K2120はロイヤルオークの初期型にも搭載されたことで知られています。さらに、ジェラルド・ジェンタ氏がデザインしたとされるトノーケースモデルにはCal.K2002/1Aが搭載されています。


Cal.K1071・K1072搭載モデルを選ぶポイント

ノンデイトか、デイト付きか

Cal.K1071搭載モデルはノンデイトで、よりシンプルなドレスウォッチとしての佇まいがあります。一方、Cal.K1072搭載モデルはカレンダー付きで実用性が高い反面、日付の早送り機構がないため操作にやや手間がかかります。シンプルさを重視するか、実用性を重視するかで選択が分かれるポイントです。

ケース素材による印象の違い

同じCal.K1071を搭載していても、ステンレスケースのRef.6562と18KYGのRef.6378では印象が大きく異なります。ステンレスモデルは3針ノンデイト、自動巻き、スクリューバックケースという構成で、実用性の高さが魅力です。18金無垢モデルはヴァシュロンらしい上品な佇まいで、よりドレッシーな装いに映えます。

ジュネーブシールの有無

Cal.K1071/1やCal.K1072/1を搭載したヴァシュロンの個体には、ジュネーブシールの刻印が確認できるものがあります。ジュネーブシールはムーブメントの仕上げが厳しい基準を満たしていることを保証するもので、パテック・フィリップにもある厳格な規格です。コレクションとしての価値を左右する要素のひとつと言えるでしょう。


よくある質問(FAQ)

Q.Cal.K1071とCal.K1072の違いは何ですか?

A. Cal.K1071はノンデイト(日付なし)の自動巻きムーブメントで、Cal.K1072はカレンダー(日付)機能を追加した派生キャリバーです。いずれもジャガー・ルクルトが製造し、金無垢ローターを搭載しています。ヴァシュロン・コンスタンタンではRef.6562などに両方のバリエーションが確認できます。

Q.ジャガー・ルクルトのキャリバーに付く「K」の意味は?

A. キャリバー番号の先頭に付く「K」は、ジャガー・ルクルトが他ブランドへOEM供給するために製造したムーブメントであることを示しています。ヴァシュロン・コンスタンタンやオーデマ・ピゲなど、世界最高峰のメーカーがこの「K」付きキャリバーを採用し、自社の品質基準に合わせて仕上げを施しています。

Q.Cal.K1071搭載のヴァシュロンにジュネーブシールはありますか?

A. はい、ヴァシュロン・コンスタンタンがCal.K1071やK1072を搭載した個体には、高品質の証であるジュネーブシールの刻印が確認できるものがあります。これはパテック・フィリップにもある厳しい規格で、ヴァシュロンが独自の仕上げ基準を満たしていることを示しています。

Q.Cal.K1071以外にヴァシュロンに供給されたジャガー・ルクルトのキャリバーはありますか?

A. ヴァシュロン・コンスタンタンには多数のジャガー・ルクルト製キャリバーが供給されています。手巻きではCal.K1001/2やCal.K1002/2、Cal.K1014などが確認できます。また、自動巻きではCal.920をベースにしたCal.K1120も搭載されており、こちらはパテック・フィリップのノーチラスやオーデマ・ピゲのロイヤルオークと同系統のムーブメントです。


まとめ

Cal.K1071とCal.K1072は、ジャガー・ルクルトが製造し、ヴァシュロン・コンスタンタンの薄型ドレスウォッチに搭載された自動巻きムーブメントです。金無垢ローターとジュネーブシールを備えたこれらのキャリバーは、ムーブメント専業メーカーとしてのジャガー・ルクルトの実力を如実に示しています。

Cal.K1071はノンデイト、Cal.K1072はデイト付きという違いがあり、ステンレスから18金無垢までさまざまなケース素材と組み合わされています。さらに、Cal.K1001/2やK1002/2といった手巻きキャリバー、Cal.K1120のような薄型自動巻きキャリバーまで、ジャガー・ルクルトからヴァシュロンへの供給は幅広い領域に及んでいます。

ムーブメントの系譜を知ることで、ヴィンテージウォッチの見方がより深くなります。ぜひ実際に手に取ってムーブメントの仕上がりを確認してみてください。

■ 駆動方式 → 自動巻き(金無垢ローター搭載)
■ ノンデイト → Cal.K1071 / Cal.K1071/1
■ デイト付き → Cal.K1072 / Cal.K1072/1(クイックチェンジなし)
■ 主な搭載先 → ヴァシュロン・コンスタンタン Ref.6562 / 6378 / 6426 / 63940 / 6594
■ 関連キャリバー → Cal.K1001/2、Cal.K1002/2、Cal.K1014(手巻き)/Cal.K1120(薄型自動巻き、Cal.920ベース)

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