ロレックス サブマリーナ Cal.1530・1520・1570の違い
ロレックスのヴィンテージ サブマリーナには、製造時期やリファレンスによって異なるキャリバーが搭載されています。Cal.1530、Cal.1520、Cal.1570——いずれも1500系と呼ばれるロレックス初の完全自社製自動巻きムーブメントファミリーに属しますが、その性格は三者三様です。
本記事では、サブマリーナに搭載された3つのキャリバーの技術的な違いと、それぞれがどのリファレンスに採用されたかを、Web上の技術資料をもとに整理します。Cal.1570単独の解説は既存記事で扱っていますので、ここではサブマリーナにおける3キャリバーの比較に焦点を当てます。
サブマリーナのキャリバー変遷

ロレックス サブマリーナは1953年の誕生以来、複数のキャリバーを経て進化してきました。1500系キャリバーに限ると、サブマリーナでの採用は以下の流れで進みました。
Cal.1530は、1500系ファミリーの基礎となったキャリバーです。Ref.5512およびRef.5513の初期モデルに搭載されました。ロレックスはこのキャリバーをワークホース(実用機)として位置づけ、クロノメーター認定を取得しない非クロノメーター仕様で供給しています。
その後、Ref.5513では1964年頃にCal.1520へと切り替えられました。一方、Ref.5512ではクロノメーター認定を取得したCal.1560を経て、1965年頃からCal.1570が搭載されるようになります。さらにRef.1680(デイト付きサブマリーナ)にもCal.1570が採用され、1972年にはハック機能(秒針停止機能)が追加されました。
Cal.1530 — サブマリーナ初期の自動巻き
Cal.1530は、ロレックスが従来のCal.1030に代わって開発した1500系キャリバーの原型です。自動巻き、26石、18,000振動/時です。
Ref.5512とRef.5513の初期ロットにこのキャリバーが搭載されました。Ref.5512の初期個体では文字盤に「SUPERLATIVE CHRONOMETER OFFICIALLY CERTIFIED」の表記がない2行ダイヤル(ツーライナー)が見られますが、これはCal.1530が非クロノメーター仕様であったためです。
Cal.1530の特徴をまとめると以下のとおりです。
- 1500系キャリバーの基本設計を確立した最初のキャリバー
- 非クロノメーター仕様(ごく一部にクロノメーター認定個体が存在するとの報告もあるが、量産品としては非認定)
- Ref.5512初期、Ref.5513初期に搭載
- サブマリーナにおける1500系採用の出発点
Cal.1520 — Ref.5513の主力キャリバー

Cal.1520は、自動巻き、26石、18,000振動/時です。Ref.5513では1963〜1964年頃からCal.1530に代わってこのキャリバーが搭載されるようになり、以降Ref.5513の主力ムーブメントとして長期間にわたって使用されました。
Cal.1520はCal.1530と同じ非クロノメーター仕様ですが、Web上の技術資料によると以下の違いが指摘されています。
- フラットヘアスプリング(平ヒゲ)を採用(Cal.1570のブレゲヒゲとは異なる)
- マイクロステラ精密調整機構を持たず、従来型のレギュレーターによる調整方式
- エアキング(Ref.5500)やオイスターデイトなど、ロレックスの非クロノメーターモデルに幅広く搭載
Ref.5513は生産期間が約28年(1962〜1989年頃)と長く、Cal.1520はそのほぼ全期間を支えた主力キャリバーです。非クロノメーターとはいえ実用精度は高く、堅牢なムーブメントとして知られています。
Cal.1570 — ハック機能を備えたクロノメーター

Cal.1570は、自動巻き、26石、18,000振動/時、サブマリーナ・GMTマスター搭載です。1500系キャリバーのなかでクロノメーター認定(COSC)を取得した上位グレードのムーブメントです。
サブマリーナでは、Ref.5512の後期モデル(1965年頃以降)とRef.1680に搭載されました。Ref.5512ではCal.1560を経てCal.1570へ移行しており、文字盤は「SUPERLATIVE CHRONOMETER OFFICIALLY CERTIFIED」の4行表記(フォーライナー)に変更されています。
Cal.1570の主な技術的特徴は以下のとおりです。
- COSC クロノメーター認定取得
- ブレゲヒゲゼンマイ(巻き上げヒゲ)を採用し、等時性に優れる
- マイクロステラ精密調整機構搭載(テンプ上の微調整ネジにより精度を追い込める)
- KIF Ultraflex耐震装置を搭載
- 1972年よりハック機能(秒針停止機能)を追加
- パワーリザーブ約48時間
1972年に追加されたハック機能は、リューズを引いた状態で秒針を停止させることで正確な時刻合わせを可能にする機構です。ダイバーズウォッチとしてのサブマリーナにとって、潜水前の時刻同期に有用な機能でした。
3キャリバー比較テーブル
| 項目 | Cal.1530 | Cal.1520 | Cal.1570 |
| 種類 | 自動巻き | 自動巻き | 自動巻き |
| 石数 | 26石 | 26石 | 26石 |
| 振動数 | 18,000振動/時 | 18,000振動/時 | 18,000振動/時 |
| クロノメーター認定 | なし | なし | あり(COSC) |
| ヒゲゼンマイ | — | フラット(平ヒゲ) | ブレゲ(巻き上げヒゲ) |
| マイクロステラ機構 | — | なし | あり |
| ハック機能 | なし | なし | あり(1972年以降) |
| 搭載サブマリーナ | Ref.5512初期 / Ref.5513初期 | Ref.5513 | Ref.5512後期 / Ref.1680 |
| 位置づけ | 1500系の基本キャリバー | 非クロノメーター実用機 | クロノメーター上位機 |
※ 振動数(18,000振動/時)を基準値として記載。Web上の一部資料ではCal.1520とCal.1570を19,800振動/時とする記述もあるが、本記事では値を採用しています。
どのキャリバーを選ぶか
サブマリーナのヴィンテージモデルを検討する際、キャリバーの違いは選択の重要な要素になります。
Cal.1530搭載モデル(Ref.5512初期・Ref.5513初期)は、1500系キャリバー初期の個体という歴史的な位置づけが魅力です。Ref.5512のツーライナーダイヤルは生産数が少なく、コレクターの間で注目される存在です。
Cal.1520搭載モデル(Ref.5513)は、サブマリーナの実用機として最も長く親しまれたキャリバーです。非クロノメーターであるがゆえにRef.5513はRef.5512より手に取りやすい存在であり、日常使いのヴィンテージ サブマリーナとして根強い人気があります。
Cal.1570搭載モデル(Ref.5512後期・Ref.1680)は、クロノメーター認定とハック機能を備えた1500系の完成形です。Ref.1680はサブマリーナ初のデイト付きモデルとしても知られ、実用性と精度を両立しています。
いずれのキャリバーも基本設計を共有しており、堅牢さと整備性の高さは共通しています。クロノメーター認定やハック機能の有無、あるいは搭載リファレンスの好みによって選ぶのが、ヴィンテージ サブマリーナ選びの王道と言えるでしょう。
よくある質問
Q1. Cal.1530とCal.1520はどちらが優れていますか?
両キャリバーとも非クロノメーター仕様であり、基本的な性能は近いレベルにあります。Cal.1530は1500系の初代キャリバーで、Cal.1520はその後継として長期間生産されました。技術的にはヒゲゼンマイの形式や調整機構に違いがあるとされますが、日常使用における体感差は限定的です。
Q2. Cal.1570のハック機能はすべての個体に付いていますか?
ハック機能は1972年に追加されたため、それ以前に製造されたCal.1570搭載モデルにはハック機能がありません。個体ごとに確認が必要です。
Q3. Ref.5512とRef.5513の最大の違いは何ですか?
最大の違いはクロノメーター認定の有無です。Ref.5512はCal.1560およびCal.1570のクロノメーター認定ムーブメントを搭載し、文字盤に「SUPERLATIVE CHRONOMETER OFFICIALLY CERTIFIED」と表記されます。Ref.5513は非クロノメーターのCal.1530やCal.1520を搭載しています。
Q4. 1500系キャリバーの整備は現在でも可能ですか?
1500系キャリバーはロレックスのヴィンテージムーブメントのなかでも広く流通しており、部品供給や整備ノウハウが比較的充実しています。ヴィンテージ時計専門の時計師による整備は可能です。
まとめ
ロレックス サブマリーナに搭載されたCal.1530、Cal.1520、Cal.1570は、同じ1500系ファミリーでありながら、クロノメーター認定の有無、ヒゲゼンマイの形式、ハック機能の有無など、明確な違いがあります。Cal.1530は1500系の出発点、Cal.1520はRef.5513を支えた実用機、Cal.1570はクロノメーター認定とハック機能を備えた完成形——それぞれの個性を理解することが、ヴィンテージ サブマリーナ選びの第一歩です。
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